「不動産投資は管理会社でほぼ決まる」という人がいるほど賃貸オーナーにとって管理会社選びは重要です。優秀な管理会社とそうでない管理会社を見極めるには、管理会社選びの指標が欠かせません。本稿の前半では、最も重要な指標となる「平均入居率の目安」について解説しつつ後半ではそのほか4つの指標を紹介します。

管理会社選びで失敗する理由は「明確な指標がない」から

不動産投資家が管理会社選びで失敗するパターンとして多い傾向なのが「なんとなく委託契約を結んでしまう」というもの。例えば営業パーソンに資料を見せられて「弊社の管理物件の平均入居率は97%前後です」「このような社内体制で管理してきます」と自信満々に売り込まれた結果「担当者が信頼できそうだから問題ないか」と細かい点まで調べず契約してしまうような流れです。

また実際に委託した後で「入居者からのクレームにすぐ対応してくれない」「空室対策をしてくれない」など不満が続出することも少なくありません。このような致命的なミスを犯す原因は、管理会社選びの指標がないことです。本稿では、どのような指標をもとに管理会社を選べばよいのか、詳しく確認していきましょう。

管理会社選びで重要な指標「平均入居率」の目安はどれくらい?

管理会社を選ぶときに最も重要な指標は「管理物件の平均入居率(または空室率)がどれくらいか」ということです。平均入居率が高かったり平均空室率が低かったりする優秀な管理会社に委託すれば空室リスクは低くなります。

賃貸物件の平均入居率は約98%

では、具体的にどれくらいの空室率・入居率であれば安心して任せることができる管理会社といえるのでしょうか。2019年の単身向け賃貸物件の平均入居率は約98%との数字があります。

平均入居率98%というのは、あくまでも全国平均です。空室率・入居率は、エリアによってかなりの差があるため、投資するエリアの平均空室率・平均入居率を把握したうえで管理会社選びをすることが重要となります。

補足:平均入居率約98%は稼働している賃貸物件を対象にしたもの

上記の空室率・入居率は、あくまでも「仲介会社が入居者付けをしようとしている」「管理会社が管理をしている」といった賃貸物件が対象です。そのため長期間放置されているような空き家は対象になっていないため、留意しましょう。このように入居率・空室率は、前提条件が変わると数値も大きく変わってきます。

そのため委託候補になっている管理会社の平均空室率・平均入居率を確認するときは「どのような条件で算出しているか」についても含めてヒアリングするのが得策です。

これも押さえておきたい!管理会社選びの指標はまだある

前述の通り管理会社選びで最も重要な指標は「平均入居率の高さ」です。さらに以下で解説する4つの指標を加えると優秀な管理会社を選びやすくなります。

指標1:委託契約している総管理戸数はどれくらいか

管理物件の平均入居率だけでなく「委託契約している総管理戸数」も管理会社選びの大事な指標の一つです。ただし入居率と違って管理戸数には「これくらいなら高い低い」という目安はありません。そのため複数の管理会社を比較して「総管理戸数が最も多い管理会社を選ぶ」といった使い方になるでしょう。

指標2:入居者対応が365日・24時間受付になっているか

入居者のトラブル・クレーム対応は、即対応が基本です。そのため「入居者対応が365日・24時間受付になっているか」も管理会社を選ぶ指標となります。管理会社の対応時間が夜間は不可の場合、入居者の満足度が下がりやすく空室リスクが高くなりかねません。ただし対応時間だけでなく対応の質の確認も大切です。

いくら365日・24時間対応になっていたとしても夜間は外部のコールセンターにつながるだけで朝まで放置しているのでは意味がありません。逆に365日・24時間対応になっていなくてもセキュリティ会社などと連携し防犯や火災、非常通報などに常時対応できる体制になっていれば問題ないでしょう。

指標3:マニュアルが整備されているか

管理業務に関するマニュアルが整備されている管理会社は、サービスの質が安定している可能性が高いです。そのため「マニュアルが整備されているか」も管理会社選びの指標になりえます。管理会社にとってマニュアルが重要な理由は、管理業務が多岐にわたるからです。マニュアルが整備されていない管理会社の場合、社員の能力や経験値などにサービスの質が左右されて不安定になる可能性があります。

とはいえマニュアルは「社外秘」となっていることが多いため、その内容を直接確認するのは難しいでしょう。まずは「管理業務に関するマニュアルがあるか否か」について確認することが重要です。もしマニュアルがある場合は「どれくらいのボリュームなのか」「どのような構成になっているか」など概要を確認してみるとよいでしょう。

指標4:キャッシュフロー重視で提案してくれるか

『不動産投資は「管理会社選び」で9割決まる』(幻冬舎MC)の著者・糸賀晃氏は「私が考える有能な管理会社とは、一言でいえば『オーナーに利益をもたらす管理会社』です」と述べています。オーナーに利益をもたらす……つまり「キャッシュフロー重視で提案してくれる管理会社が優秀」ということです。

この部分を委託契約前に確認したい場合は、管理会社に対して「契約した場合、どのような空室対策を提案してくれますか」などと質問すると管理会社のスタンスを確認しやすいです。この問いに対して即答できない管理会社との契約は少なくとも避けるべきでしょう。あいまいな返答ではなく「効率的に空室を埋める方法」「稼働率を高める方法」など具体的に明示してくれる管理会社を選ぶと安心です。

「不動産投資チームの部下を選んでいる」そんな感覚で管理会社選びを

ここでは「管理会社を選ぶときの指標」をテーマに解説してきました。その内容を振り返ってみましょう。管理会社選びで最も重要な指標は「平均入居率(または平均空室率)」です。賃貸物件の大規模調査によると2019年の平均入居率は98.28%です。ただし平均入居率はエリアよってかなり差があるため、対象エリアの平均値を把握したうえで判断するようにしましょう。

このほかにも管理会社を選ぶときの指標には、以下の4つがあります。

・ 委託契約している総管理戸数はどれくらいか
・ 入居者対応は365日・24時間対応になっているか
・ マニュアルが整備されているか
・ キャッシュフロー重視で提案してくれるか

これらの指標を満たす優秀な管理会社をパートナーに選べば手間をかけずに賃貸物件を経営することが期待できます。会社の仕事に例えると「逐一具体的な指示を出さなくても理想の結果を報告してくれる優秀な部下」を持ったような感覚です。自分が率いる不動産投資チームの部下を選んでいる……それくらいの意気込みで管理会社を選びましょう。