“お金あまり”といわれる時代を反映して2021年に入ってからも株価は随分上昇傾向です。しかし投資の世界では、確実に増やせる資産運用方法はありません。資産運用と一口にいっても株式や債券などの有価証券から不動産投資まで幅広い傾向です。本記事では、その中でも不動産投資をクローズアップし始めるタイミングについて解説します。

なぜ不動産投資を始めるのか

不動産投資を始める理由は、人それぞれです。ここでは、いくつかの例を挙げてみましょう。

資金の効果的な運用の選択肢の一つとして

資産運用の選択肢は、例えば国内外の株式や債券、REIT、投資信託、ETFといった金融資産や不動産投資などがあります。株価は「コロナ禍の実態のない上昇」などといわれ急落の懸念がある人もいるのではないでしょうか。不動産投資は、有価証券とは少し異なり現物資産が手元に残るという特性があります。

老後資金のため

老後資金の基本は年金です。しかし2019年に「老後2,000万円不足問題」が話題となったように公的年金だけで余裕のある老後生活を過ごせないことは、多くの人の共通の認識となっているでしょう。そのため老後資金を個人年金や貯蓄で積み増す人も多い傾向です。しかし個人年金の場合は、一般的に受取に期限があり貯蓄の場合は取り崩していくことになります。

一方で賃貸不動産の場合は、長期的に安定した収入を期待できる点が大きなメリットです。

家族の生活安定のため

子どもや配偶者など身近な家族の安定した生活のための収入源を考える人は、決して少なくありません。例えば何らかの事情で一般人のように収入を得られない人にとっては、不動産と賃貸収入は大きな収入源といえるでしょう。預貯金の場合は、切り崩していくと時間の経過とともに残高が減っていきます。

しかし不動産と賃貸収入は、継続が期待できる点が大きなメリットです。そのため家族への安心を残せる資産の一つといえるのではないでしょうか。

資産を増やす手段として

金融資産も分配金を再投資することにより資産を増やすことは可能です。一方で不動産投資は、自身や家族の生活を守るための運用のほかに借入金を賃料から返済することにより資産増をはかることができます。金融資産も信用取引を行えばレバレッジをかけて資産を増やすことが期待できるでしょう。しかし不動産投資は現物資産への投資となるためリスクは低いといえます。

必要な資金が定期的に入って来る

老後資金や現役の副収入のいずれかの場合でも定期的(毎月)賃貸料が入ってくることは、他の運用資産にないメリットです。

投資運用資産との比較

投資運用資産を「株式」「債券」「REIT」「ETF」「投資信託」「投資不動産」の6つで比較した場合、どのような違いがあるのかについて比較してみましょう。

株式 債券 REIT ETF 投資信託 不動産
価格変動期間 短期(日) 短期(週) 短期(日) 短期(日) 短期(数日) 長期
換金性 数日 数日 数ヵ月~数年
必要資金規模 数万円~ 数万円~ 数万円~ 数万円~ 数万円~ 約1000万円~
保有コスト
(運用会社等)
ほぼゼロ ほぼゼロ ほぼゼロ 定期的~1%(年) 定期的~1%(年) 税・管理費・金利
購入コスト 0~少額 0~少額 0~少額 0~少額 0~3% 税・手数料

比較項目は、上記5つの項目について不動産投資との比較が分かりやすい項目を選んでいます。「株式」「債券」「REIT」「ETF」「投資信託」の間での対比はさまざまです。しかしここでは、不動産投資との違いを中心に記載しています。

不動産投資の優位

資産運用の方法として考えた場合、不動産投資は多くの優位点があります。

優位点1:まとまった家賃収入を定期的に受け取れる

老後資金や副収入として不動産賃料収入を得る場合、他の金融資産からの分配金が数ヵ月単位の収入に対して不動産投資は毎月家賃を受け取ることが期待できます。ただしローン返済のある期間は、返済額家賃収入の差額(場合によっては手出しがある)に限られる点は注意しましょう。また空室になった場合は、家賃が入ってこないリスクがあります。

優位点2:不動資の価格変動は長期であり、目先の一喜一憂が不要です

金融資産は、日々価格変動の波があります。一方で不動産は価格の変動こそあるものの変化は年単位など長期目線では上昇傾向です。そのため日々の価格変動に一喜一憂はすることがありません。

優位点3:家族の将来の生活安定を期待できる

居住用の住まいのほかに賃貸不動産があれば配偶者や子どもたちの将来について自分が亡くなった後も収入面と資産の両面で支えることができます。団信に加入していれば保険金でローン残高は相殺され完済できますので、他の金融資産と比較して相当優位な点といえるでしょう。

優位点4:インフレに強い

政府や日銀の公表する物価指数は0%台で推移をしていますが統計に現れない物価上昇を実感する人は少なくありません。現金・預金と比較して不動産がインフレに強いのは周知のところです。

優位点5:少ない自己資金からでも始めることも可能

不動産投資は、最少額でも1,000万円程度と多額の資金が必要な傾向です。しかし一定額の自己資金があれば銀行からの融資を組み合わることで投資することができます。毎月の家賃収入額と返済額・返済期間は、購入物件の金額と自己資金によって異なる点は注意が必要です。

不動産投資のリスク

次に、不動産投資のリスクについて検証してみましょう。

リスク1:空室リスク

投資用不動産は、賃貸が前提のため、空室になると収入がなくなる点は注意が必要です。短期間の空室であれば挽回可能ですが数ヵ月以上の空室は大きな損失となりかねません。購入時にリスク防止として物件の魅力度と空室を最小期間にできる管理会社の見極めが大切です。

リスク2:災害リスク

災害リスクは確率が高いとはいえませんが自然災害や入居者による問題行為の発生など賃貸不動産にまつわる災害や事故のリスクもあります。保険と管理会社の質の両面で考慮することが必要です。

リスク3:負債リスク

退職金や相続資産運用など全額自己資金で不動産投資を行うケースもありますが多くの人の場合、一部自己資金で残額が銀行ローンとなるでしょう。見合いの資産があるため、過度の心配は不要ですが負債額が気になる人もあるかもしれません。

市場やトレンドはどうなのか

不動産投資について優位点とリスクについて見てきました。ここからは、個人投資家の投資対象になる賃貸マンションについて市場やトレンドを確認してみましょう。

国内のマンションストック数と新規供給数

国土交通省が公表している「分譲マンションストック戸数」によると2019年末時点のマンションのストック数は、665万5,000戸(国土交通省)でした。2010~2019年では、年間10万戸前後が新規に供給されています。コロナ禍の2020年は、約10万8,000戸供給されましたが消費税改定の影響もあり前年の91.6%でした。一戸建てが前年の88.6%と比較すると落ち込みは少なくなっています。

供給されている集合住宅の床面積別のデータ(2020年着工ベース)

着工ベースに基づく床面積別の比率を見てみると以下の通りです。

~30平方メートル 15.80% ワンルームマンションの主流
31~40平方メートル 23.90% ワンランクアップワンルーム
41~50平方メートル 20.90%
51~70平方メートル 31.60% ファミリー用の主流
71平方メートル~ 7.80%

賃貸物件が中心と思われる40平方メートル以下で約40%(39.7%)の構成比があり、年間の供給数10万戸の中では、約4万戸が供給されていることになります。ワンランク上の2Kタイプを含めると年間5万戸近い供給数とみることができるのではないでしょうか。

コロナ以後の予測

コロナ禍で定着したテレワークにより都心離れが始まりつつあるといわれています。しかしテレワーク拠点としてより一層リーズナブルな賃料で借りるワンルームのニーズが高まることも予測されるでしょう。地価の安い郊外や地方でのワンルームマンションが増える可能性もあります。

投資家事情による不動産投資のタイミング

不動産投資を始めるかどうかは、本人の決断次第です。しかし一体どのような状況を見極めながら決めるのが良いのでしょうか。

人生にとっての時期・年齢

不動産投資は、自分の家を買うのと同様に大きな決断をする事柄です。「独身時代」「子育て終了期」「定年前後」など人生のライフプランを考えるいくつかの時期があります。自己資金でまかなうケースは、それほど多くないため、銀行からの融資を考えている場合は、年齢が若い時期がよいでしょう。

不動産が安く変えそうな時期

金融資産のような日々の変動ではありませんが不動産価格も世間の景気の波により変動することもあります。そのため他の人が買わない時期が良いタイミングという見方もできるでしょう。

不動産を取り巻く環境(金利や税制)が良い時期

景気を維持・刺激するため、金利や税制は小刻みに手直しされています。金利は、長期のローンとなるため、0.1~0.2%程度の変動であっても収支に大きな影響を与えかねません。不動産向け融資の利率は、変動や固定などさまざまあるため、慎重な選択したうえで時期を見ることも大切です。税制は、固定資産税や登録免許税の軽減が適用される可能性もあるため、注意が必要な項目といえるでしょう。

不動産会社の縁で、良い物件と出会ったとき

不動産は、大きな買い物となるため、慎重さだけでなく決断力も大切です。良い物件に出会ったときは、ためらわずに決断をしないと機会を逃がすこともあるでしょう。そのため不動産投資をすると決めた場合は、多くの情報に接しながらいざというときは決断をする準備も必要です。

融資してくれる金融機関が見つかったとき

不動産融資の金利は、固定と変動が入り混じり2%前後~10%近いものまで融資を受ける人の属性や物件によって変わってきます。そのため不動産業者任せにするのではなく自身のルートで信頼関係のある担当者に相談できる関係を構築しておくことが大切です。

まとめ

不動産投資は、良い時期に良い物件を選び資金手当ができ良い不動産管理会社に委託できればより豊かな人生を過ごす糧となり得ます。半面、空き家リスクや負債を抱えることもあり返済が終わるまで気がかりが残るのも事実です。金融資産運用との比較では、手軽さや必要資金額では違った一面があります。しかし不動産投資の場合は、特有の優位点がたくさんあるのが特徴です。