吉田謙太郎
宅建士・不動産投資家・ライター|筑波大学卒業後、大手不動産会社にて投資用不動産の売買および賃貸営業・投資家へのコンサルティング・自社メディアでの記事執筆などを行う。自身でも社会人1年目(22歳)から不動産投資をしており、横浜市・大阪市・神戸市に区分マンションを4戸運用中(2021年11月現在)。保有資格は宅地建物取引士、マンション管理士、管理業務主任者。(I列)

不動産投資をする中で、不動産業者や投資家が「レインズに出す」「レインズで探す」と口にしているのを聞いたことがある方がいるかもしれません。レインズが不動産投資においてどのような役割を持っているのか、一般の個人投資家でも利用できるものなのかと疑問を持ったことのある不動産投資家も少なくないでしょう。

レインズとは?

レインズ(REINS)とは、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムのことで、「Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)」の頭文字をとった名称です。レインズは、正式に会員登録をしている不動産会社のみが利用できるネットワークシステムであるため、基本的に一般の個人投資家が閲覧できるものではありません。

物件のオーナーから売却または賃貸の依頼を受けた不動産会社が当該物件の情報をレインズ上に登録・公開し、全レインズ会員が物件情報を一元的に共有して買い手や借り手と効率的にマッチングさせることを目的とした物件流通媒体の1つです。

レインズから得られる3つの有益情報

不動産仲介業者や買取業者はレインズ上に流通する物件を日々閲覧し、仲介または買取の条件に合う物件がないか探しています。不動産のプロ同士で情報共有がなされるレインズにおいては、不動産投資をするうえで有益な以下3種類の情報を得ることができます。

・ 最新の流通物件情報
・ 流通物件の募集開始時期
・ 過去の成約実績

1.最新の流通物件情報

レインズにおいては、最新の流通物件情報を随時閲覧することができます。随時最新の流通物件情報を閲覧できるということは、成約して募集が終了した物件の情報がないため常に最新の情報を得られるということです(一般の民間企業等が運営する個人用のポータルサイトでは、募集が終了した物件の情報が残っていることもあります)。

物件オーナーから売却または賃貸の媒介依頼を受けた不動産業者は宅地建物取引業法等の規定により、一定の期間内に当該物件の情報をレインズ上に登録しなければなりません。

物件が成約した際も不動産業者はレインズ上にその旨の登録をしなければならず、成約登録がされた物件の募集情報は在庫一覧としての掲載から落とされます。

2.流通物件の募集開始時期

レインズでは、当該物件が登録された日付を確認することができます。レインズへの登録日付は、実際に募集を開始した日付と近い場合が多いことから、当該物件が売却または賃貸の募集を開始したおおよその時期を把握することができるでしょう。

当該物件の募集開始時期は、以下2つの方法で活用できることがあります。

・ 募集条件設定時の参考データ
・ 価格交渉の材料

レインズへの登録から長期間が経過している物件は、買い手または借り手からのアプローチが少ないという仮説を立てることができるため、当該エリアにおいてどのような条件で募集をすると、どのくらいの期間にわたって市場に残るかを考える際の参考データとなる可能性があります。

自分が物件を売却または賃貸の募集をする際に、周辺の類似物件の募集状況を参考データとすることで、相場に適合した募集条件の設定がしやすくなるでしょう。

長期間にわたって募集を続けている物件は、買い手または借り手からのアプローチの少なさからオーナーが弱気になっていることも考えられるため、価格交渉のチャンスがあるかもしれません。当該物件が市場に残り続けているという事実から、、募集条件が相場よりも高いという主張をすることで、有利に価格交渉ができるかもしれないということです。

3.過去の成約実績

レインズには、過去に掲載・成約された物件の実績が登録されるため、過去の成約実績を検索して参照することが可能です。成約実績とは、成約条件(価格、礼金、広告費等)や成約日を指し、募集開始時期も併せて参照することで募集から成約までに要したおおよその期間を把握することもできます。

特に区分マンションにおいては同じマンション内の同じ間取りの物件が過去にどのような条件で成約したのかを知ることができるため、売買時にも賃貸時にも相場を把握するうえでの重要なデータが得られるでしょう。

不動産の売買や賃貸においては価格交渉が頻繁にされるため、募集時の条件と成約時の条件に大きな乖離が生じることも少なくありません。募集中の物件の条件に関する情報のみならず、成約した物件の情報も知ることができることは、不動産投資家にとって非常に有益といえるでしょう。

個人投資家がレインズを活用する2つの方法

不動産投資をするうえで有益な情報源となるレインズですが、原則として一般の個人投資家が閲覧できるものではありません。一般の個人投資家がレインズ上の情報を参照したい場合にとり得る方法は以下の2つです。

・ 不動産業者経由で情報を取得する
・ 「レインズマーケットインフォーメーション」を利用する

1.不動産業者経由で情報を取得する

レインズに加入している不動産業者に情報提供を依頼して、レインズ上の情報を参照するというのも選択肢の1つです。一定程度の信頼を得て融通の利く関係性を構築できれば、情報提供を承諾してくれることも多いにあり得るでしょう。

不動産業者経由で情報を取得することのメリットとしては以下の2つが挙げられます。

・ プロのフィルターを通して情報を取得できる
・ 情報の検索や集計の手間が省ける

不動産投資を始めて間もない投資家は、情報の収集や取捨選択をする方法が分からないことも少なくないため、不動産業者というプロが抽出した情報を取得できるという点はメリットとなり得るでしょう。

不動産業者経由で情報を取得することのデメリットとしては以下の2つが挙げられます。

・ 情報取得に時間がかかる
・ 第三者のバイアスが入る可能性がある

不動産業者といえども第三者を経由しての情報取得となるため、情報収集の即時性に欠けたり、一次情報に触れられない可能性があったりする点には注意が必要でしょう。

2.「レインズマーケットインフォーメーション」を利用する

レインズマーケットインフォーメーションとは、レインズに登録されている、実際に売買が行われた物件の価格(成約価格)等の取引情報を検索することができるシステムです。

レインズマーケットインフォーメーション
http://www.contract.reins.or.jp/search/displayAreaConditionBLogic.do

レインズマーケットインフォーメーションでは、マンション・戸建物件において地域や間取り、築年数、最寄り駅からの距離といった諸条件でソートをかけて物件の成約価格を検索することができます。

的確な条件に絞って検索をかけることができれば、一次情報を即時に収集することができるため、一般の個人投資家が不動産業者の取り扱う情報にアクセスできる有益な手段の1つといえるでしょう。

レインズは個人投資家にとっても有益な情報ソース

レインズは、最新の流通物件情報や流通物件の募集開始時期、過去の成約実績等の不動産投資家にとって重要な情報を収集することができる有益なシステムですが、一般の個人投資家はアクセスができないという難点があります。

一般の個人投資家でも、信頼関係を構築できている不動産業者を経由したりレインズマーケットインフォーメーションを活用したりすることで、レインズ上の情報を取得する機会があるため、マーケットの相場を把握する際などに有効活用するのが得策です。

レインズに関するよくある質問

Q.レインズはエリアごとに分かれている?
・ 東日本不動産流通機構(東日本レインズ)
・ 中部圏不動産流通機構(中部レインズ)
・ 近畿圏不動産流通機構(近畿レインズ)
・ 西日本不動産流通機構(西日本レインズ)

上記4つのエリアにレインズがあります。

Q.レインズのデータを見る方法は?
東日本レインズのサイトでは「レインズデータライブラリー」としてサマリーのレポートが見られます。

Q.レインズに登録するのに費用はかかる?
物件のオーナーが費用を払うことはありません。