八木チエ
株式会社エワルエージェント 代表取締役|宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナーなどの資格を持ち、中立的な立場で不動産投資に関連する情報をお届けします。書籍、メディアなどに記事掲載の実績多数。

女性の資産運用として不動産投資が注目されています。しかし、さまざまな投資手法があるなかで、不動産投資はなぜ女性に選ばれるのでしょうか。

今回は、女性の資産運用について投資との違いや特徴、運用のポイントなどを交えて解説します。「不動産投資に興味あるけどどうやって始めればよいかわからない」「いろいろな投資先があって違いや特徴がわからない」という女性は、ぜひご一読ください。

資産運用とは

資産運用とは、金融商品の売買により手元にあるお金や将来的に得られる収入を効果的に管理・運用することです。

資産運用と投資の違い

投資は資産運用よりも狭義の意味があり、資産運用に内包される投資の目的の1つです。つまり、投資は将来的な金融商品の価値上昇を期待し、資金を投入することを指します。

資産運用の流れ

資産運用は主に3つの流れでおこなわれます。

1つ目のステップは「目標設定」です。投資でどれだけの利益を得たいか、得たお金を何に使いたいかなどの目標を立てます。

2つ目のステップは「自己資金の分類」です。現在ある自己資金のなかで、「生活費」「将来的に必要な資金」「使う予定のない余剰金」に分類し、余剰金のなかからどれくらい投資に回せるか自己資金を洗いだします。

そして3つ目は「投資へのアクション」です。さまざまな金融商品の特徴を知り、目標や投資に回せる自己資金に応じた金融商品へ実際に投資するアクションへと進みます。

投資・資産運用の特徴

投資や資産運用先は多種多様なため、それぞれの特徴がわかりにくいと感じる方は多いのではないでしょうか。この章では、6つの投資・資産運用先を解説します。

不動産投資

不動産投資とは不動産を購入し、第三者に貸し出して毎月の家賃収入を得たり、その物件を売却して売買差益を得たりすることです。長期的な不労所得を得られ、経済の状況に影響を受けにくい点がメリットです。半面、高額な初期投資が必要であり、自然災害や老朽化にともなう定期的な物件のメンテナンスに多額の費用がかかることがあります。

投資信託

投資信託とは複数の投資家から集めた資金を1つにまとめ、投資家に代わって運用の専門家が不動産や株式、債券などに投資・運用する金融商品のことです。運用成果と投資家が投資した金額に応じて利益が分配される仕組みとなっています。投資の専門家が運用を代行してくれるため、初心者でもスタートしやすい点がメリットです。しかし、委託する分だけ手数料がかかる点や、投資の専門家に委託するとしても必ず儲けがでるとは限りません。

株式投資

株式投資とは、企業が事業資金を調達するために発行しているオーナー権利(株式)を購入し、売買差益を得る投資手法です。売買差益だけでなく、株式の保有による配当金や株主優待を受けられるものもあります。銘柄選びが非常に重要なため、失敗しないためには勉強にある程度の時間を要する点がデメリットです。

FX

FXは「Foreign Exchange」の略称で、日本語では「外国為替証拠金取引」と呼ばれます。証拠金(取引をおこなう際に相手方に預け入れる担保金)をFX業者に預託し、差金決済(有価証券の受渡しをせず、売買価格差に相当する金銭の授受のみでの決済)で通貨売買する取引です。レバレッジをかけて投資ができるため、少ない資金で大きな利益を得られる可能性がある半面、為替レートの変動が激しく大きな損失を被るリスクもあります。

仮想通貨(暗号資産)

仮想通貨とは、デジタル通貨のなかでもネットワーク上で電子データのみでやりとりされる資産です。不特定多数の間で物品やサービスの対価として使用できます。仮想通貨を用いた投資では、仮想通貨取引所で売買するケースが最も一般的です。価格変動が大きく短期間で大きな利益を得られる可能性がありますが、大きく損する可能性もあります。また、今後さらに法律で規制が強化されることが指摘されており、将来性が不透明な点もデメリットです。

金への投資とは、通貨(金貨)や金地金などの金の現物を、その日の価格で購入や売却する取引です。金の価格は一般的に、海外の金相場(ドル建て・オンス単位の金価格の円建て・グラム単位での換算など)で決定されます。金は希少性が高く相場が安定しており、シンプルな投資の仕組みなため、投資初心者でも始めやすい点がメリットです。

女性の資産運用が注目を集める背景

女性の資産運用が注目を集めているのは、女性が抱える社会的な背景が影響しています。4つの主な背景を見ていきましょう。

ライフスタイルやライフステージの変化

不動産投資は、自分の生活のペースに合わせて柔軟に収入を得たい女性に向いている投資手法です。結婚や出産などによってライフスタイルやライフステージが変化することで、女性はキャリアの変更を余儀なくされることがあります。しかし、不動産投資による不労所得が得られれば、結婚や出産などで自分の時間が取りにくくなっても、社会の一員として経済活動の継続が可能です。今まで会社から得ていた収入が無くなる(または育休や時短勤務などで減る)としても、負い目を感じたり心配になったりする必要はなくなります。

老後を見据えた貯蓄

日本女性の平均寿命は2019年現在、87.45歳と、世界的にみてかなり長い点が特徴的です。長生きは尊いことですが、その分だけ老後資金が必要という意味でもあります。平均寿命は年々増加傾向にあり、今後も女性にとって長生きリスクへの備えは必須です。不動産投資は、長期的な不労所得が見込めるため、早期に投資をして余裕のある老後を暮らす資金づくりとして注目を集めています。

女性の賃金上昇

自分の財力だけで十分生活できるほどの経済力をもつ女性が増え、余剰金を投資に回したいニーズが増えたことも考えられます。女性が輝ける社会を目指し積極的に管理職や重要なポストに据える会社も増え始めています。マネーリテラシーが高く、向上心の高い女性のなかには、労働時間の対価としての収入だけでなく、不労所得としての副収入を得たい目的で不動産投資を始める人もいるようです。

生涯未婚率・晩婚率の上昇

不動産投資が女性に注目を集めている一因として、女性の生涯未婚率(50歳時の未婚率)の高さがあげられます。2015年現在、日本では女性の生涯未婚率が14.1%と上昇傾向です。また、女性の経済力アップや自立心の向上もあって、晩婚化も進んでいるといわれます。生涯未婚の可能性を見越し、さらなる自己資金づくりとして不動産収入を希望する心理的な背景があるといえます。

女性こそ不動産の資産運用が向いている理由

なぜ女性が不動産投資に向いているといわれるのでしょうか。主な7つの理由を見ていきましょう。

女性目線で冷静かつ慎重に判断できる

女性は生活に根ざした冷静で慎重な判断をできる人が多い傾向にあります。女性ならでは視点や配慮は、競合物件との差別化につなげられる大きな強みです。自身の意見を生かした、不動産経営が実現できます。

ライフスタイルやライフステージの変化に対応できる

不動産管理業者に管理や運用を委託すれば、実質的に手間をかけずに不動産運用が可能です。仕事や家事、育児など多くのタスクを日々こなさなければいけない方でも、不動産投資は両立しやすい投資先といわれています。自分が直接行わなくても自動的に不労所得としての家賃収入が入るため、時間がない人でも継続しやすいでしょう。

老後の年金不足問題に準備できる

平均寿命の長い女性にとって、老後の年金問題への対応はマストです。20代や30代の早期から不動産投資をスタートさせ、老後までにローンを完済できれば、その後は家賃収入をそのまま老後資金にできます。労働としての対価ではなく家賃収入は不労所得なので、体力的に厳しい老後にはありがたい収益でしょう。年金だけの生活に不安な人も、私設年金としてプラスし老後資金の準備が可能です。

小さな元手から大きな投資が可能

不動産の購入には大きな資金が必要ですが、投資ローンを活用すれば小さな元手から大きな投資ができます。うまく運用できればローン返済も家賃収入で得た利益からできるため、自己資金が少ない女性でもはじめやすい点がメリットです。

公庫の融資で女性優遇制度を活用できる

日本政策金融公庫では「女性、若者/シニア起業家支援資金」があり、女性は低金利で公庫から融資を受けることが可能です。一定の条件があるものの、不動産投資を比較的有利に進められます。

ミドルリスク・ミドルリターン

不動産投資はミドルリスク・ロングリターンの投資なため、慎重な価値判断ができる女性に向いている投資先です。ミドルリスク・ロングリターンとは、物件価格が急激に下落するリスクが低く、長期保有を前提にした投資先であることを示しています。

長期的かつ安定的な資産運用のポイント

長期的かつ安定的な資産運用を実現するには、いきなりニッチな物件に大きな資金を投入しないことがポイントです。例えば、東京の都心5区(千代田・中央・港・渋谷・新宿)の区分マンションは、入居者のニーズが高く、空室率を抑えての投資運営ができるため、不動産投資初心者にも向いています。投資に慣れてきたら、複数の物件所有を視野に入れ手を広げていくと確実に資産を増やすことが期待できるでしょう。

まとめ

資産運用や投資にはさまざまな種類がありますが、不動産投資はとくに女性に向いている投資先です。慎重な価値判断や暮らしやすさへのこだわりなど、女性ならではの感性を生かした不動産経営は、競合物件との差別化につながる大きな強みとなります。今回紹介した内容をぜひご自身の資産運用や投資にお役立てください。