本間貴志
ビジネス書に特化した編集会社のサラリーマン・ライターを経て、資産運用や税務の分野を専門とするライターとして活動。自主管理で賃貸経営をする不動産投資家の顔も持つ。

不動産投資に失敗した人の典型的なパターンは「リスクを甘く見ていた」「業者のセールストークを鵜呑みにした」というものです。不動産投資に限らず投資はその分野のリテラシーを身につけていればリスクを回避しやすくなります。このリテラシーを習得する方法の一つが不動産投資をテーマにした本に触れることです。本稿では、編集部がオススメする厳選本を5つ紹介します。

不動産投資の初心者は、著者が税理士や業界識者の本を選ぶべき

はじめに「初心者が不動産投資の本をどのような視点で選べばよいか」について解説します。大型書店をのぞいたりアマゾンで検索してみたりすると世の中には不動産投資の本がたくさんあることが分かるでしょう。その膨大な選択肢の中から初心者がはじめに選ぶべき不動産投資の本は「著者が税理士や業界識者」のものです。

著者が不動産会社の経営者や不動産投資家の本も多いのですが例えば著者が経営者であれば自身の会社が得意にしているジャンルを推すのが当然でしょう。また著者が不動産投資家の場合、自身が成功してきたジャンル以外を全否定する偏った内容も少なくありません。著者が経営者や不動産投資家の本でも良書はたくさんありますが初心者は自身で情報の取捨選択をするのが難しい面もあります。

そのためまずは税理士や業界識者の本を通して基本的なリテラシーを身につけるのが先決といえるでしょう。

初心者にオススメの不動産投資の本5選

上記の理由から今回紹介するのは「著者が税理士や業界識者の不動産投資の本」が中心です。

オススメ本1『知りたいことが全部わかる!不動産の教科書』(ソーテック社)

(画像=知りたいことが全部わかる!不動産の教科書)


不動産業界は、専門用語が多く商品(物件)の流通構造も独特です。また契約方法や手数料にも業界特有のルールがあります。そのため初心者は不動産の基本を固めてから不動産投資の知識を学ぶのが効率的です。そのきっかけになるのが『知りたいことが全部わかる!不動産の教科書』。本書は、不動産投資家をはじめ不動産のプロフェッショナルや士業、銀行員などを想定読者にした1冊です。

内容自体は、不動産の実務で使える専門性の高いコンテンツになっています。しかし全体的に読みやすい文章でまとめられているので初心者にもオススメです。

[本書の5つのポイント]
1. 不動産会社(宅建業者)の役割が分かる
2. 不動産の流通の仕組み、契約方法、手数料(報酬)などが分かる
3. 物件や立地の調査の実務が分かる
4. 不動産に関わる基本的な法律が理解できる
5. 資金計画や融資のポイントがつかめる

オススメ本2『生涯現役で稼ぐ「サラリーマン家主入門」』(プレジデント社)

(画像=生涯現役で稼ぐ「サラリーマン家主入門」)


不動産投資には、さまざまなジャンルがあります。しかし初心者は「どれを選べばよいか、分からない」という人も多いでしょう。『「サラリーマン家主」入門』では、客観的な立場からアパート・マンション・戸建てなど各ジャンルのメリット・デメリットを分かりやすく解説してくれるのでヒントになります。本書の著者は、賃貸経営の業界でよく知られる永井ゆかり氏です。

永井氏は、賃貸経営の専門紙を発行する「全国賃貸住宅新聞社」の取締役かつ同社が発行するオーナー向けの専門雑誌『家主と地主』の編集長を担っています。深い専門知識と経験に基づいた広い視点を持っている著者だからこそフラットな内容で各ジャンルの魅力を語れるといえるでしょう。

[本書の5つのポイント]
1. 不動産のジャンル別のメリット・デメリットが分かる
2. 悪徳不動産会社の手口を具体的に教えてくれる
3. 情報収集から不動産会社選びまでのポイントが分かる
4. 物件の購入と売却の方法と注意点を教えてくれる
5. 家主業の経営計画や融資の考え方が分かる

オススメ本3『不動産投資のお金の残し方裏教科書』(ぱる出版)

(画像=不動産投資のお金の残し方裏教科書)


不動産投資のスキームは、税金の仕組み(損益通算や減価償却など)をうまく使って節税しながら最終的なリターンをしっかりと確保するというものです。そのためオーナーにとって税金の知識は必須といえるでしょう。それだけに不動産投資の税金本は、数多く出版されています。そのなかで「イチバン売れている」と出版社がアピールしているのが本書です。著者は、税理士大家さんの石井彰男氏。

「会計・税務の知識」と「儲かる物件の選別眼」を組み合わせることで手残りのキャッシュフローを増やすための方法を伝授してくれます。もともと不動産投資家だった著者は、不動産の知識のない税理士のせいで利益が大幅に減ってしまったことをきっかけに「税理士に丸投げ体質」から脱却。その結果「自身で税理士資格を取得した」という経歴の持ち主です。

それだけに理屈一辺倒の税理士の本とは異なり初心者の立場になってやさしく解説してくれます。

[本書の5つのポイント]
1. 新米大家でも儲かる物件選びのポイントが分かる
2. 区分、戸建て、アパート、一棟マンションなどの長所と短所が分かる
3. 積算価格やキャッシュフローの計算式が分かる
4. 著者自身が実際に使っている節税方法を教えてくれる
5. 法人化による節税方法を教えてくれる

オススメ本4『Excelでできる不動産投資「収益計算」のすべて』(技術評論社)

(画像=Excelでできる不動産投資「収益計算」のすべて)

成功した不動産投資家の本を読むと「収益計算に強い」という共通項があることが分かるでしょう。将来的に「数多くの区分マンションを所有したい」「一棟物件を所有したい」という人は、今のうちから収益計算のスキルを身につけておくのが賢明です。このとき役立つのが『Excelでできる不動産投資「収益計算」のすべて』。

収益計算ができるようになるとキャッシュフローがつかめるようになり融資のときにも有利になるでしょう。なぜなら収益計算をきちんとしていることで金融機関の信頼を得やすくなるからです。またキャッシュフローが出せないときにも「どこに原因があるか」がすぐに分かります。本書は「計算が苦手」「Excelが苦手」という人でも利用しやすいのが特徴です。

不動産投資の収益構造や融資のポイントを分かりやすい言葉で解説してくれていますしダウンロードして使える「収益試算Excelシート」も付いています。ここで身に付けたスキルは、不動産投資だけでなく普段のビジネスやほかの投資分野でも役立てられるそうです。

[本書の5つのポイント]
1. 不動産投資の収益計算ができるようになる
2. 不動産投資の収益構造が理解できる
3. 金融機関の融資の正しい考え方が分かる
4. 不動産投資に関連する税金のことが分かる
5. 特典のExcelシートを利用して手軽に収益試算をできる

オススメ本5:『不動産投資 最強の教科書』(東洋経済新報社)

(画像=不動産投資 最強の教科書)

もし、不動産投資の本で1冊だけをオススメするなら『不動産投資 最強の教科書』になるでしょうか。本書は不動産投資の分野では圧倒的人気のコンテンツ。アマゾンの投資・金融・会社経営の売れ筋ランキングで2位にランクインする2018年発売のロングセラーです。(2020年6月8日時点)

著者は、サラリーマンを辞めて専業の不動産投資家になった不動産鑑定士の鈴木宏史氏。本書は、100人を超える不動産投資家をヒアリングして彼らが「始める前にこれを知っておけばよかった」「これを知らなかったから苦労した」と感じたことに、著者の「失敗しないためのエッセンス」を加えた内容になっています。

『不動産投資 最強の教科書』は、全体が計100のQ&Aで構成されているため、疑問に思っているテーマをすぐに見つけられることも人気の理由でしょう。時間がない人は、気になるQ&Aに絞って読むと効率的です。

[本書の5つのポイント]
1. 不動産投資を始めるにあたっての心構えが分かる
2. 実際に不動産投資をどう始めればよいのかが分かる
3. 物件探し、不動産会社の選び方や対応のコツが分かる
4. 融資、物件管理、出口戦略のポイントも理解できる
5. 不動産投資家として成功するためのマインドセットまで理解できる

今回、紹介した5冊はKindleでも購入できる

ここで紹介した5冊に共通するのは「Kindleでも購入できること」です。通勤時間や休憩中などのスキマ時間に不動産投資の知識を効率的に吸収したいならKindleを上手に活用してみてはいかがでしょうか。電子書籍は、かさばらないので荷物にならない点は大きなメリットです。もちろん「これらの本を読めば不動産投資の勉強は終わり」ということではありません。

自分と相性のよさそうな不動産のジャンルに特化した本を一通り読んだり賃貸経営専門の新聞や雑誌を購読したりするなどしてさらに知識を蓄積していきましょう。