丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

初めてのマンション投資では「いくらの物件を購入したらよいか迷う」といった人も多いかもしれません。新型コロナウイルスの影響でタワーマンションや億ションはリスクが高まっています。そこで区分所有マンションで都心の好立地物件を購入可能な5,000万円程度の物件にスポットをあててみてはいかがでしょうか。

本記事では、初めてのマンション投資でレバレッジを活用して効率よく収益を上げる方法を考えます。

初めてのマンション投資に適した物件は区分所有

どんな不動産王でも最初に購入した物件は必ずあります。なかには1つ目の物件で成功を収めて不動産投資の優位性を確信し事業を拡大していった人もいるでしょう。それほど最初に購入する物件の選択は大事です。賃貸経営の対象には「アパート」「1棟マンション」「区分所有マンション」などがあります。

初めてのマンション経営の場合、まだノウハウがないので基本を学びながら不動産投資の経験を積むのが無難です。こうした理由から最初に購入するのは区分所有マンションが適しているといえるでしょう。区分所有からはじめてマンション経営に自信が持てるようになったら将来的には1棟マンションのオーナーを目指してみるのもよいでしょう。

タワマンと億ションはリスクが高い

区分所有マンションにも1,000万円程度~数億円までさまざまな価格帯の物件があります。かつてはタワーマンションと1億円以上する億ションが不動産投資の華でした。テレビでは、芸能人をはじめとする著名人が億ションに住む優雅な生活の様子が放映され、羨望のまなざしを向けた人もいるのではないでしょうか。

しかし2020年に感染が拡大した新型コロナウイルスの影響で状況は一変しました。コロナ禍においてタワーマンションは3密になるリスクから人気が離散しているといわれています。なぜなら低層階以外の居住者は、確実にエレベーターを使用するため、時間帯によっては3密になる可能性が高くなるからです。

タワーマンションや億ションは充実した共用部も魅力ですが、コロナ禍においては3密リスクでデメリットに変わっています。また新型コロナウイルスの影響による企業業績の悪化は大企業にも及んでおり億ションの家賃を払いきれない家庭も増える可能性も否定できません。そう考えると区分所有であっても初めから高額な物件を購入するのはリスクが高いでしょう。

5,000万円なら都心の好立地物件の購入も可能

では、具体的にいくらくらいの物件が適しているのでしょうか。マンション経営では、安定して入居者を確保できる物件が理想です。いくら買いやすい価格でも空室が続けば家賃収入を得ることはできません。さらに出口戦略(売却)を考えると、資産価値の高いエリアの物件を選ぶことが必要です。5,000万円の予算なら好立地の物件の購入が可能なレベルといえます。

不動産価値が高いエリアは、都心5区と呼ばれる「千代田区」「中央区」「港区」「渋谷区」「新宿区」です。これらのエリアは「ビジネス」「商業」「住宅地」として3拍子そろって人気があります。そのため東京都全体の平均よりも価格は高めです。そこで注目したいのが中古マンションです。中古マンションで探すと5,000万円の予算でも都心5区の物件を購入できる可能性が高くなります。

新築で購入したい場合は、以下で紹介するレバレッジを効かせた購入方法なら都心5区の新築物件にも手が届く可能性があるでしょう。

レバレッジを効かせた物件購入方法

自分が住む居住用マンションを購入する場合、頭金は多いほど有利です。しかし人に貸し出す投資用マンションの場合は、話が別です。多くの金融機関では、ローンを組む場合の頭金の目安を10~20%程度に設定しています。5,000万円の物件で目安を20%として考えると、頭金は1,000万円です。4,000万円のローンを組むことになり、利息の支払いを考えると返済負担が多いように感じるかもしれません。

とはいえ全額自己資金で賄えば本当に得になるのでしょうか。全額自己資金と借入金を併用した場合の収益の違いを比較してみましょう。比較しやすいように家賃利回りは同じ6%として計算します。

ケース1

自己資金:1,000万円
購入物件価格:1,000万円
借入金:0円
家賃収入:毎月5万円
* 年間収益:毎月5万円×12ヵ月=60万円(利回り6%)
* 年間収支:年間収益60万円-支払利息0円=60万円(実質利回り6%)

ケース2

自己資金:1,000万円
借入金:4,000万円
購入物件価格:5,000万円
金利:3.0%
返済期間:30年
家賃収入:毎月25万円
* 年間収益:毎月25万円×12ヵ月=300万円(利回り6%)
* 年間収支:300万円-支払利息約120万円(毎月約10万円×12ヵ月、初年度の数字)=約180万円(実質利回り3.6%)
* 約180万円÷1,000万円=18.0%(自己資金に対する収益利回り)

比較してみると表面利回り自体は同じ6%なのに年間収支ではローンを併用したほうが120万円も利益が多くなるのです。自己資金に対する利回りも12%も高くなります。支払利息は、月を追うごとに減っていくため、ますます利回りの差は拡大していくでしょう。つまりローンを組んで利息を払っても借り入れして家賃収入の多い物件を購入したほうが効率的なことが分かります。

このように少ない資金をもとに融資で大きな物件を購入して高い収益を上げることが「レバレッジ効果(てこの原理)」です。この物件のケースでは「年間収支180万円÷60万円=3倍」のレバレッジを効かせたことになります。元本を含めたローン総支払い額で計算しても300万円-約202万円=約98万円手元に残るため、比較的ゆとりのある経営が可能です。

ただしローンは変動金利を選んだ場合、金利が上昇したときに収益が下がるリスクがあります。安全性を高めるには、できる限り金利の低い金融機関で借りるようにすることが大事です。

※上記収益は一例のため参考程度にお考えください。

都心マンションの家賃相場は?

最後に東京都心にあるマンションの家賃相場を確認しておきましょう。当該エリアの物件を購入する場合は、見込める家賃収入以内に収まるようにローン返済額を設定する必要があります。ランキングサイト「RANK1」が発表している東京23区の家賃ランキングは以下の表の通りです。

▽東京23区家賃相場ランキング(ワンルームマンション価格基準)

順位 区名 ワンルーム 1LDK 2K 2LDK
1 港区 14万800円 23万7,200円 15万9,900円 33万8,500円
2 中央区 12万8,100円 18万6,800円 17万300円 24万9,700円
3 千代田区 12万3,000円 18万6,800円 16万8,800円 27万6,100円
4 渋谷区 11万5,100円 22万9,100円 14万9,100円 30万7,300円
5 目黒区 9万7,200円 19万900円 12万1,500円 25万3,700円
6 文京区 9万5,900円 16万6,200円 11万9,200円 21万7,600円
7 品川区 9万4,500円 17万400円 11万6,500円 23万5,600円
8 台東区 9万4,300円 14万9,400円 12万2,000円 19万9,900円
9 新宿区 9万3,900円 19万9,700円 14万400円 26万6,700円
10 江東区 9万2,300円 14万8,200円 10万400円 20万7,700円

出典:RANK1「東京23区の家賃ランキング安い区と高い区を公開2021最新版」

やはり都心5区が上位を占めています。新宿区はワンルームでは9位ですが1LDKでは3位、2LDKでは4位と高い家賃水準です。では、5,000万円の予算でどの程度の物件が購入できるのでしょうか。インターネットの不動産販売サイトに掲載されている物件を一例として紹介します。

【5,000万円で購入できる物件の一例】
* 価格 4,780万円(中古)
* 所在地 東京都千代田区東神田
* 最寄り駅 総武本線「馬喰町」駅徒歩約5分
* 間取り 1LDK
* 築年数 約9年

上表の「千代田区1LDK」の家賃相場と同じ家賃と仮定すると年間家賃収入は224万1,600円で購入価格4,780万円に対する表面利回りは約4.69%です。無理のないローンが組めれば安定した経営が望める物件といえるでしょう。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で好まれるマンションの傾向に変化が出てきました。高額すぎる物件では、空室リスクが高い傾向です。そのため低額のマンションだと投資額が少ないかわりに多くの家賃収入は望めません。高い家賃収入が見込める東京都心5区の5,000万円前後の物件を購入するのが、初めてのマンション投資にはバランスがよいといえるのではないでしょうか。