大西 勝士
フリーランスの金融ライター(AFP、2級FP技能士)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数のメディアで執筆しています。

不動産投資は物件種類(マンション・アパート・戸建て)、エリア(都心・地方)、築年数(新築・築浅・築古)などの組み合わせによってさまざまな手法が存在します。中でも初心者向けと紹介されることが多いのが、東京都心の中古ワンルームマンション投資です。

都心の中古ワンルームには、収益不動産としてどのような魅力があるのでしょうか。今回は、都心の中古ワンルームマンションで不動産投資を始めるメリットについて解説します。

都心は今後もしばらく人口増加が続く

不動産投資において、避けるべきリスクの一つが空室リスクです。不動産投資は長期にわたって安定した収入が期待できますが、入居者がいなければ家賃は入ってきません。空室リスクを下げるには、人口が多くて賃貸需要が期待できるエリアの物件に投資する必要があります。

東京都の人口減少ペースは緩やか

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(2018年推計)」によると、日本の総人口は減少傾向にあり、2030年以降はすべての都道府県で総人口が減少すると予測されています。

しかし、東京都の人口減少ペースは、ほかの道府県に比べると緩やかです。2045年の総人口が2015年を上回るのは東京都のみとなっており、今後もしばらく現在の人口水準が維持される見込みです。

都心3区は2040年まで人口増加が続く

さらに東京都総務局の統計によれば、千代田区、中央区、港区のいわゆる都心3区は2040年まで人口増加が続くと予測されています(下表参照)。また、江東区は2035年、品川区や渋谷区などは2030年に人口のピークを迎える見込みで、ほかの東京都区部や多摩地区に比べるとピークを迎える時期が遅くなっています。

<区別人口のピーク時期>

2020年までにピーク 2025年までにピーク 2030年までにピーク 2035年までにピーク 2040年までにピーク
区部 足立区、葛飾区、江戸川区 新宿区、墨田区、目黒区、 大田区、世田谷区、中野区、 杉並区、豊島区、北区、 荒川区、練馬区 文京区、台東区、品川区、 渋谷区、板橋区 江東区 千代田区、中央区、港区

この結果から、長期にわたって安定した賃貸需要が見込めるのは東京都心の物件といえます。

ワンルームマンションはファミリータイプより需要が見込める

マンションには単身者向けのワンルームだけでなく、家族向けのファミリータイプもあります。それぞれ特徴は異なりますが、投資対象として購入するならワンルームのほうが需要は見込めます。また、コスト面においても、ファミリータイプよりワンルームのほうが有利です。

東京は単独世帯が増加傾向にある

東京都の「東京都世帯数の予測」によれば、東京都の1世帯当たりの人員は一貫して減少傾向で推移すると予測されています。2020年は1.96人でしたが、2030年は1.92人、2040年には1.85人まで減少する見込みです。

一方で、一般世帯数は、東京都の総人口がピークを迎える2025年以後も増加が続き、2035年の723.7万世帯でピークを迎えます。東京都では単身世帯が増加傾向にあり、2035年には単独世帯の割合が50%を超えます。また、単独世帯数と夫婦のみの世帯数は2040年まで増加傾向で推移します。

この結果から、単身世帯を対象とした都心の中古ワンルームマンションは、今後も安定した賃貸需要が期待できます。

ワンルームマンションは空室期間やコスト面でも有利

退去が発生すると、次の入居者を迎えるために室内のリフォームや修繕が必要です。ワンルームマンションは、ファミリータイプに比べるとリフォーム費用を安く抑えられます。

入居期間や物件の状態によっても変わってきますが、中古ワンルームの場合、オーナー負担は数万円~10万円程度が一般的です。また、リフォームは最短1週間程度で完了するので、募集活動を早く始めることができ、早期に空室を解消することが可能です。

一方で、ファミリーマンションは間取りが広く、備品も多いため、一般的には30~50万円程度の負担が生じます。室内の状態によっては、さらにコストが増える可能性もあるでしょう。リフォームも2週間~1ヵ月程度かかるため、空室期間が長期化する傾向にあります。

また、ファミリータイプは意思決定者が複数いるため、ワンルームに比べると入居が決まるまでに時間がかかるのもデメリットです。

中古は新築に比べて物件価格が割安

不動産投資を始めるときは、新築と中古のどちらの物件にするか迷うかもしれません。自分が住むために購入するなら新築を選ぶかもしれませんが、投資用として購入するなら中古が有利です。

新築物件は、販売価格に利益や人件費・広告費などが上乗せされているため、中古に比べると価格が割高になる傾向があります。物件価格が割安な中古マンションであれば、初心者でも投資を始めやすいでしょう。また、物件価格が安いため、利回りも高い傾向にあります。

不動産投資と収益物件の情報サイトである健美家(けんびや)の「収益物件 市場動向 年間レポート(2020年)」によれば、東京23区の区分マンションの価格推移と利回りは以下の通りです。

東京23区 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
区分マンション
築10年未満 2,343万円 2,521万円 2,810万円 3,101万円 3,490万円
(5.25%) (4.98%) (4.84%) (4.58%) (4.46%)
築10年~ 2,129万円 2,248万円 2,431万円 2,576万円 2,653万円
(5.56%) (5.33%) (5.18%) (5.02%) (4.94%)
築20年~ 1,318万円 1,461万円 1,546万円 1,558万円 1,522万円
(7.49%) (6.70%) (6.74%) (6.78%) (6.94%)

参照:不動産投資と収益物件の情報サイトである健美家(けんびや)「収益物件 市場動向 年間レポート(2020年)」をもとに編集部作成

築10年未満の物件に比べると、築10年以上の物件は価格が安く、利回りが高いことがわかります。

不動産は築年数が経過するほど資産価値が低下し、修繕も必要になってきます。それでも、マンションの法定耐用年数は47年と長く、長期間稼働できるため、適切に管理されている物件であれば魅力的な投資対象といえます。

分散投資でリスク軽減が可能

不動産投資では、1棟アパートや1棟マンションに投資する方法もあります。1棟ものは区分マンションに比べると投資金額が大きく、利回りも高いため、うまく運営できれば安定した収入源を確保できるでしょう。

しかし、1つの物件に投資資金が集中させることになるため、リスクは高くなります。空室リスクが高いエリアの物件を買ってしまったり、災害などで建物に被害が出てしまったりすると、経営が成り立たなくなるかもしれません。

一方で、区分マンションの場合、分散投資によってリスク軽減が可能です。投資エリアや購入時期、築年数を分散させることで、以下のような効果が期待できます。

・ 購入価格が平準化される
・ 設備の修理・交換時期が分散される
・ 空室リスクの軽減が期待できる
・ 地震や火災の被害を抑えられる

不動産価格は景気動向などに左右されますが、区分マンションに投資して購入時期を分散させれば、保有物件全体の購入単価が平準化されます。築年数の異なる物件を複数所有することで、エアコンや給湯器などの設備の交換時期が分散されます。

また、投資エリアを分散しておけば、大学や企業の撤退といった周辺環境の変化が生じても空室リスクを軽減でき、地震や火災の被害を最小限に抑えることも可能です。

まとまったお金が必要になった場合に現金化しやすい

不動産投資をしているときにまとまったお金が必要になれば、保有物件の売却を検討するのではないでしょうか。不動産は、金融商品のように数日で現金化できる資産ではありません。なるべく短期間で現金化できるように、売却しやすい物件に投資することが大切です。

地方の1棟アパートなどは買い手を見つけにくく、現金化ができたとしても安い値段で売却せざるを得ないケースもあります。しかし、都心の中古ワンルームマンションは、不動産の中では流動性が高いため、比較的短期間で売却できます。

仲介での売却活動がうまくいかず、なかなか買い手が見つからなかったとしても、都心の中古ワンルームなら買い取りを行っている不動産会社があります。そのため、最短で1週間程度、抵当権が設定されている物件でも1ヵ月程度で現金化が可能です。

まとめ

不動産投資にはさまざまな手法がありますが、都心の中古ワンルームマンションは今後も賃貸需要が見込めるので、比較的少額から投資を始められます。また、物件を分散させることでリスク軽減が期待でき、早期に現金化できるのも魅力です。初めての不動産投資は、都心の中古ワンルームで始めましょう。