不動産投資

(画像=krakenimages-com/stock.adobe.com)
新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント
CFPR、一級FP技能士(資産運用)、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン住宅購入のアドバイス)の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

「資産運用の必要性は分かっているけど何から手を付けたらいいのか分からない」と感じている人は多いのではないでしょうか。特にインターネット上の情報だけを鵜?みにして根底にある問題を理解せずに投資を始めてしまうと後悔しかねません。そこで今回は、資産運用を行う際によく聞く疑問の代表的なものを取り上げ、ひとつ一つ解説していきます。

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## 疑問1:運用を始めるタイミングはいつがベスト?

「運用を始めるタイミングが分からない」という人は多いのではないでしょうか。もちろんiDeCoなど加入期間が決まっているものは、早く始めることで運用の複利効果だけでなく節税効果も見込めることは事実です。しかしそれ以外の方法で運用を始めるのであれば「いつがベスト」という明確なタイミングはありません。

運用を始めるタイミングを考えるには、まず「どのように運用していくか」を考えることが必要です。例えば毎月一定額を積み立てながら運用していく場合、ドルコスト平均法により購入金額のブレを少なくする効果があるため、基本的に開始するタイミングを考える必要はありません。反対にまとまった額で一括投資をする場合は、相場が下がっているときに買うほうが効果は期待できます。

なかには、積立投資といっても「相場が下がっているうちが買い時では?」と考える人もいるかもしれませんが、相場の底値は誰にも予測できません。老後資金や教育資金といった利用目的の場合は、必要になる時期があらかじめ分かっています。もし積立投資で用意しようと考えている場合は、タイミングにこだわるよりも早くから始める点を優先して考えることが大切です。

また投資初心者の場合は、できるだけ一括投資することは避け、何回かに分けて行う分散投資を視野に入れておきましょう。

## 疑問2:手元にある100万円単位のお金、この資金の運用法は?

例えば相続や贈与などで100万円単位のお金を受け取った場合は、どのように資産運用すればよいでしょうか。「単に貯蓄へ回すだけではもったいない」と感じて投資を考える人もいるでしょう。その際に大切なのは「資産全体のバランスやリスク許容度を踏まえたうえでの長期分散投資」です。長期分散投資を行うためには、以下の2つを押さえておく必要があります。

* ライフプランやキャッシュフローをもとに資産全体のどのくらいの部分を安定運用で行うか
* 積極運用についてはどの配分にするか

例えば株式で資産運用する場合であれば長期運用期間中に30%前後の値下がりする局面も考えられます。つまり100万円すべてを株式に投資していた場合、30万円前後の評価損が出る可能性も十分にあり得るのです。そのため他の保有資産も含めて「いくらの損失までなら耐えられるか」ということを考え、その範囲内で資産配分を決めていくことが大切になってきます。

よくいわれるのが、「まとまったお金を運用する際には7対3の法則を考える」というものです。具体的には、以下のような考えをもとに投資を行います。

* 資金の7割程度を一括投資に充てる
* 運用の原則の一つ分散(時間分散)にならって短期間で分割して購入
* 残りの3割程度については相場のトレンドが大きく変わるチャンスを待つ
* 相場が大きく下がったときに追加投資を行えるように流動性のある資産で確保しておく

## 疑問3:退職金や相続など運用に回す資金はどれくらいの比率がベスト?

退職金や相続などでまとまった資金を手にした場合、ベストな運用比率というものはありません。そのため自分の置かれている現状や希望、投資経験やリスク許容度などを十分に理解したうえで決める必要があります。よくありがちなのが、まとまった資金を手にした際にそれだけを切り離して「どのように運用していけばいいだろう」と考えるケースです。

運用比率を考える場合は、新しく入ったまとまった資金とすでに保有している資産についても合算して考えることが重要です。また資産全体を一つのポートフォリオとして資産運用を考える必要があります。資産全体から運用に回せる比率については、疑問2の考えを参考にし、さらに60歳前半までであればリスク性の資産をゼロにしないことがポイントです。

一般的に「寿命の関係から高齢になるほど運用期間に余裕がなくなるため、リタイア後の資産運用ではリスク性の高いものより安全資産で保有するほうがいい」といわれています。しかし平均寿命が年々延びている「人生100年時代」では、リタイア直後の60歳代はまだ高齢とは言い切れません。またリタイア後の運用は「老後生活を支える資金のため、絶対に減らせない」という考え方もあります。

しかし将来のインフレ懸念や将来の消費税増税などを視野に入れた場合はどうでしょうか。物価上昇率や増税率以上で資産運用を行わないと手元の資産価値はどんどん下がってしまいます。ちなみに安全資産とリスク性資産の割合を決める場合「キャッシュフロー表を作成し運用しなかった場合の80歳時点における金融資産残高を確認してから決める」という方法なら簡単です。

もしこの方法で100歳まで生きていてもお金が残っているような場合は、無理に運用をする必要はありません。逆に平均寿命よりも前に残高がマイナスになる状況であれば資産運用を取り入れて資産の寿命を延ばすことが必要です。仮に2,000万円のまとまった資金がある場合、そのうちの600万円(3割)を予備資金として確保しておき残りの1,400万円(7割)で運用することを考えましょう。

1,400万円全額をすぐに運用に回すのではなく、さらに7割程度(980万円程度)をリスク性の資産で運用します。その際には、一括投資はせずに商品と時間の分散をきちんと重ね合わせながら3年程度の期間で分散投資していくことが無難です。

## 疑問4:勤務先の確定拠出年金はリスクをとった運用にするべき?

企業型確定拠出年金の想定利回りについては、企業ごとに異なります。しかし現在の企業型確定拠出年金制度で用意されている商品ラインアップにある元本確保型の商品は、利回りが1%を超えるものはほぼありません(2020年11月時点)。多くが0%台となっていることから元本確保型の商品で運用を続けると企業が想定している年金額を大きく下回ることになります。

そのためリスク性のある投資信託商品の中から複数の商品を選んで運用することが重要です。例えば毎月1万円の拠出で10年間積み立てて、運用益は再投資、1年複利計算とした場合の結果は以下のようになります。

利回り 10年積み立てた場合 30年積み立てた場合
元金 運用益 合計 元金 運用益 合計
1% 120万円 約6万円 約126万円 360万円 約59万円 約419万円
3% 120万円 約19万円 約139万円 360万円 約222万円 約582万円

2%違うと10年間で運用益に約13万円もの差がついてしまうのです。同金額で30年間という長い期間であれば運用益の差額は約163万円という大きな金額になります。そのため50歳代前半までは投資信託などのリスク性のある商品で運用を行うことがよいでしょう。確定拠出年金の制度では、運用益が多ければ多いほど非課税のメリットも大きくなります。

言い換えれば元本確保型の商品では、せっかくの確定拠出年金制度のメリットが生かしきれません。そればかりか運用期間中の手数料(会社負担)を加味すると「元本確保でも総資産額は減っている」という状況を招く可能性もあります。できれば50代前半までは株式を対象とした投資信託をメインに株式の割合をできるだけ多くした資産配分で運用を行うとよいでしょう。

## 疑問5:投資した株式などが値下がりした場合、損切りすべき?それとも持ち続けるべき?

2020年2~3月にかけて発生したコロナショックに伴い、保有していた株式などの運用商品が大きく値下がりして頭を抱えた人も多いのではないでしょうか。市場の混乱時は、運用初心者だけが不安に感じるわけではなく、ベテラン投資家でも悩まされます。このような場合には、以下の3点を考える必要があります。

* 保有していた株式などの運用商品が値下がりした背景には何があるのか
* 今後、値上がりする期待が持てるのか
* 持てるとすれば、その要因は何か

3年後や5年後といった中期的な視野で考えてマーケット全体が今より値上がりしている可能性が高いと感じるのであれば、そのまま保有しておくことも一つの方法です。もし保有している運用商品が特定分野の株式などに投資する、いわゆるテーマ型の商品の場合、人気を支えていた要因が注目されなくなることで大幅に値崩れし数年後の値上がりも期待できない可能性があります。そのような状態が明確な場合は、売却を考えたほうがいいでしょう。

## これからの時代においてはある程度のリスク性運用が必要

資産運用のポイントは「長期・分散・積立」の3つといわれています。投資の基本事項を忘れないだけでなく、資産形成は現役世代で終わりではないことも十分に自覚しておくことが必要です。「平均寿命から逆算してあと何年運用期間があるのか」を目安に、将来のインフレも加味しながらリタイア後もある程度のリスク性の資産を保有して運用を続けることが大切といえるでしょう。

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