資産運用
(画像=beeboys/stock.adobe.com)
新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント CFP®、一級FP技能士(資産運用)、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員 個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン住宅購入のアドバイス)の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

コロナ禍の影響もあって貯蓄信仰から運用へと考え方をシフトする人も出てきました。特に30代の若い世代にその傾向が強くなっています。寿命が延びた分、老後に生活する資金が必要になるため、当然「資産の寿命を延ばす」といったことも考える必要があります。コロナ禍では、働き方改革をはじめさまざまな政策が打ち出されています。

ここでいま一度「税制優遇策の活用」に着眼した資産形成の方法について確認しておきましょう。本記事では、今後の税制優遇策の活用や改正内容について解説していきます。

長寿時代に向けての資産形成にはNISAと確定拠出年金の併用を!

税制優遇策を活用した資産形成といえば「iDeCo(イデコ)」や「NISA(ニーサ)」の活用です。通常、資産を運用した際の配当収入や売却益に対しては、20.315%(復興所得税を含む)の税金が徴収されます。しかしiDeCoやNISAの非課税制度を活用することで配当収入や売却益の運用益について非課税とすることが可能です。

iDeCoの1年間の掛け金は、全額小規模企業共済等掛金控除として所得控除となります。所得税は、累進課税制のため、ある程度の所得のある人(所得に対する税率が高い人)にとっては、かなりの節税効果が見込めるのです。さらに2020年の税制改正において給与所得控除の引き下げ(高所得者にとっては増税)が行われるため、他の項目で所得控除を受けられる枠があることはありがたいことでしょう。

NISAでは、年間の投資限度額があるものの定められた期間の運用益が非課税となる税制優遇措置が取られています。iDeCoと併用しながら活用することでさらに税制優遇の恩恵を受けることが期待できるでしょう。ただし以下2点については注意が必要です。

  • iDeCoの場合、受け取りの際には課税対象となること
  • NISAの場合、購入した株式などが値下がりした場合でも損益通算ができない

2つの制度のメリットとデメリットをしっかりと押さえたうえで最大限に活用していきましょう。

実際にいくら貯められるの?

では、実際にiDeCoやNISAを活用するとどのくらいの資産形成ができるのでしょうか。具体例を挙げて見ていきます。

iDeCoを活用したケース

仮に30~60歳までの30年間iDeCoで積み立てを行うとしましょう。掛け金は、毎月の掛け金の上限と仮定します。

被保険者年間の掛け金毎月の掛け金30年間の掛け金(元金)
自営業者等81万6,000円6万8,000円2,448万円
勤務先の会社に企業年金制度がない会社員および専業主婦(夫)27万6,000円2万3,000円828万円
勤務先の会社に企業型確定拠出年金制度がある会社員24万円2万円720万円
勤務先の会社に確定給付企業年金制度のある会社員14万4,000円1万2,000円432万円

これはあくまでも積み立てた額のみで運用益は見込んでいません。では、仮に3%で運用できた場合はどうなるでしょうか。計算すると概算は下表のようになります。なお、「年金終価係数」を用いて算出しています。年金終価係数とは、将来の積立合計額を求める際に使用する係数で、一定期間一定利率で毎年一定金額を複利運用で積み立てたケースの金額が分かります。3%で30年間運用した場合の年金終価係数は47.575ですので、例えば自営業者の場合、以下のような計算式です。

年間の掛け金81万6,000円 × 年金終価係数47.575 = 3,882万1,200円

被保険者30年間の掛け金(元金)30年間の運用益合計額
自営業者等2,448万円1,434万1,200円3,882万1,200円
勤務先の会社に企業年金制度がない会社員および専業主婦(夫)828万円485万700円1,313万700円
勤務先の会社に企業型確定拠出年金制度がある会社員720万円421万8,000円1,141万8,000円
勤務先の会社に確定給付企業年金制度のある会社員432万円253万800円685万800円

運用を取り入れながら非課税制度を活用することで、積み立てながら資産を大きく増やせられそうだということが理解できるのではないでしょうか。

NISAを活用したケース

2020年11月現在、一般NISAを活用する場合の年間限度額は120万円です。最長5年間運用できるため総額600万円の非課税枠が利用できます。つみたてNISA の場合は、年間限度額40万円を20年間非課税で運用でき総額で800万円を資産形成に充当することが可能です。この場合も3%で運用できたと仮定します。

・一般NISA
毎年120万円を年初に投資、非課税分の運用益を再投資した場合、約656万円(うち元金600万円)

・つみたてNISA
毎月3万円を20年投資していった場合、約982万円(うち元金720万円)

一般NISAは5年で約56万円、つみたてNISAは20年で約262万円増やすことが期待できます。

老後資金としての配分を考える

では、上で算出した額を老後資金としてどのように配分していけばいいのか考えていきましょう。モデルケースについては以下のように設定します。

  • 企業年金制度のない会社員でiDeCoに30年間加入、3%で運用
  • 定年退職年齢60歳
  • 退職一時金2,000万円
  • 取り崩し期間の運用利回り3%
  • 公的年金(65歳から支給)は月額22万円
  • つみたてNISA を60~80歳まで利用、3%で運用

60~64歳

2020年時点での公的年金の受給開始は65歳のため、60~64歳までの期間については再雇用制度などを利用し「収入を得る」ことを考えることが必要です。国税庁が発表している「令和元年分民間給与実態統計調査」によると60~64歳の平均年収は411万円でした。ボーナスなしと仮定すると月給は約34万円となります。

退職一時金の2,000万円については、取り崩し期間の利回り3%で運用し、20年間で取り崩すと考えます。そうなると以下の計算式から月額は約11万円のため、月給と合わせて約49万円がこの期間の収入です。

(退職一時金2,000万円 × 資本回収係数0.06722)÷ 12ヵ月 = 約11万2,033円

なお「資本回収係数」とは、一定の金額、期間で均等に受け取る場合の1回の金額を算出する係数です。3%で20年間取り崩す場合の同係数は0.06722です。

65~69歳

65歳からはいよいよ本格的なリタイア世代に入ります。給与収入がないため蓄えてある資産をどのように運用したり切り崩したりしていくかを考えることがポイントです。本ケースでは、この間の収入を公的年金に頼るのではなくiDeCoで積み立てた資産の取り崩しと退職一時金の取り崩しのみと仮定してみます。

iDeCoを30年間積み立て3%で運用した結果の1,313万700円について60歳から受け取らずにそのまま65歳まで運用を続けた場合は約1,522万円です。これを5年で取り崩すと、月額約28万円となります。退職一時金の取り崩し額約11万円を合わせると約39万円が65~69歳の収入です。

70~79歳

公的年金の繰り下げ限度年齢となった70歳から公的年金の受け取りを開始したと仮定すると5年間の繰り下げを行ったことにより当初の年金月額22万円が31万円に増加。さらに退職一時金の取り崩し額の約11万円を合わせた42万円がこの間の収入となります。

80歳以降

ここで初めてつみたてNISA の取り崩しを開始します。上のNISAを活用したケースで計算した通りつみたてNISA を最大限活用し3%で運用した結果の1,075万円を20年で取り崩すと考えると月額約6万円です。公的年金の約31万円+約6万円=約37万円が80歳以降の収入となります。

このようにシミュレーションしていくと60歳以降すべての期間において生活文化センターが発表している「令和元年度 生活保障に関する調査《速報版》(令和元年9月発表)」結果にある「ゆとりのある老後生活費月額平均36万1,000円」の前後の金額ということが分かります。今回試算したこのモデルケースのポイントは、以下の2つです。

  • 公的年金の受給を70歳まで繰り下げたこと
  • 年齢制限のないつみたてNISA を60歳から20年間行ったこと

公的年金については、5年繰り下げることで年金額が42%増加します。年換算すると8.4%のため、かなりお得です。公的年金の繰り下げ受給を考える際に問題となるのは損益分岐点でしょう。例えば70歳から受給を開始した場合、81歳まで受け取れば元は取れます。厚生労働省の公表している「令和元年簡易生命表」によると2018年の日本人の平均寿命は男性で81.41年、女性は87.65年です。

統計的に見れば十分に元が取れるという見方もできるでしょう。またつみたてNISAを60歳からはじめるという考え方も斬新ではないでしょうか。資産形成は、できるだけ早くはじめることが大切といわれていますが余剰資金がないにもかかわらず資産形成を行い家計に影響を与えることになっては本末転倒です。

そのためまず収入に余裕のある状態を作りそのうえで新たに資産形成をはじめる考え方も今後は必要になります。

確定拠出年金制度の改正について

確定拠出年金制度については、企業型および個人型(iDeCo)ともに2020年に改正が行われています。その改正による今後の具体的なスケジュールおよび改定内容について確認していきましょう。

受給開始時期の選択肢の拡大

2022年4月1日より確定拠出年金(企業型および個人型(iDeCo))における老齢給付金の受け取り開始の上限年齢が現行の70歳から75歳に引き上げられます。そのため確定拠出年金(企業型および個人型(iDeCo))における老齢給付金は、60~75歳までの15年の間で受け取り開始時期を選択することが可能です。

企業型DC・iDeCoの加入可能年齢の拡大

2020年現在の確定拠出年金(企業型)では、原則60歳まで加入することが可能です。また60歳以降は、規約に定めがある場合に限り65歳未満の年齢まで加入できます。しかし今後の定年延長や高齢者雇用の増加に対応するため、2022年5月からは70歳未満であれば加入できるようになるのです。ただしこの場合は勤務先の企業の確定拠出年金規約によって加入できる年齢などが異なります。

そのため規約の見直しなどがあった際には、詳細をきちんと確認しておくことが必要です。また2020年現在のiDeCoは、60歳未満の国民年金被保険者すべてが加入できます。しかしこちらも2022年5月からは国民年金の第2号被保険者であれば65歳まで加入することが可能です。

また第1号被保険者の場合も60歳以降における国民年金の任意加入被保険者の期間については加入できるようになります。国民年金の任意加入とは、60歳になった時点で支払った期間が40年に満たない場合や途中納付を免除されていた期間がある場合に加入できる制度です。特に20代の学生期間に納付しておらずそのままになっている人などは積極的に利用するとよいでしょう。

制度改正における注意点

確定拠出年金制度の法改正により2022年より具体的な改正が実施されます。しかし確定拠出年金制度における老齢給付金の受給を開始した人や公的年金を65歳前に繰り上げ請求した場合は、改正後の確定拠出年金制度(企業型および個人型(iDeCo))の加入要件を満たした場合であっても加入することはできません。

NISAについてもつみたてNISAの期間延長や一般NISAの制度変更が2024年に予定されており制度改正は今後も続いていくと予想されます。また今後も寿命が延びることで働きながら収入を得られる現役世代とその後のリタイア世代の期間が同じくらいになる可能性もあるでしょう。こういった背景を踏まえたうえでiDeCoやNISAなど税制優遇策を有効活用することが大切です。

>>【無料小冊子】高所得者のための不動産投資バイブル

>>【年収700万円以上の方限定】貯金0円からの資産形成 マネーオンライン個別セミナー≪株・不動産・外貨・保険・貯金≫

【あなたにオススメ】
新型コロナ関連の給付金。それぞれの税務上の取り扱いはどうなる?
コイン流出事件から早2年、、、仮想通貨の今
コロナ禍における資産運用の考え方とは?投資戦略のポイントについても解説
どこから始めればいい?資産運用の種類と基本
税理士が解説!勤務医の確定申告の基礎