不動産投資

(画像=travnikovstudio/stock.adobe.com)
吉田謙太郎
吉田謙太郎
宅建士・不動産投資家・ライター|筑波大学卒業後、大手不動産会社にて投資用不動産の売買および賃貸営業・投資家へのコンサルティング・自社メディアでの記事執筆などを行う。自身でも社会人1年目(22歳)から不動産投資をしており、横浜市・大阪市・神戸市に区分マンションを4戸運用中(2021年11月現在)。保有資格は宅地建物取引士、マンション管理士、管理業務主任者。(I列)

かつて「不動産投資は高所得者や地主以外には手が出せない」と考えられていました。しかし現在では金融機関の不動産投資への融資が活発になったことから年収500万円以下のサラリーパーソンにも身近な投資対象になっています。ただ不動産投資においては、やはり高所得者のほうが有利に投資を行うことができ不動産投資に適していることに変わりはありません。

では、具体的に高所得者は不動産投資においてどのような恩恵を受けられるのでしょうか。本記事では、高所得者ほど不動産投資をすべき理由や恩恵について解説します。

## 高所得者と不動産投資が結びつきやすい理由

高所得者の不動産投資に言及するうえで必ずといっていいほど登場するキーワードが「節税」。なぜなら日本の税制が高所得者に大きな影響を与えているためです。2020年現在の日本の税制では、累進課税制度が採用されており所得が高いほど以下の表のように税率も高くなります。

**・所得税の速算表(平成27年分以降)**

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円~194万9,000円まで 5% 0円
195万円~329万9,000円まで 10% 9万7,500円
330万円~694万9,000円まで 20% 42万7,500円
695万円~899万9,000円まで 23% 63万6,000円
900万円~1,799万9,000円まで 33% 153万6,000円
1,800万円~3,999万9,000円まで 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

参照:国税庁

具体的には、課税所得が900万円超えだと所得税の税率は33%、1,800万円超えだと40%、4,000万円超えだと45%です。さらに住民税が一律10%で課税されるため、高所得者は課税所得の半分弱ないし半分以上の税率を適用されているのが現状となっています。一方で課税所得が695万円未満では所得税の税率は20%以下です。

高所得者が累進課税制度の影響をいかに受けているかが理解できるのではないでしょうか。高所得者は、税率も納税額も高くなるため、節税する手段として不動産投資を検討する場合が多い傾向です。しかし高所得者が不動産投資において得られる恩恵は節税のみにとどまりません。

## 高所得者ほど不動産投資をするべき3つの理由

高所得者ほど不動産投資をすべき理由を一言で表せば「不動産投資で受けられる恩恵が非常に大きいから」です。具体的な要素は、以下の3つです。

* 節税メリットが大きい
* 大規模な融資を受けられる
* 優良物件の情報が回ってきやすい

### 1.節税メリットが大きい
高所得者は、高い税率により高額な税金を納めています。そのため毎年の確定申告後に還付される所得税の金額および住民税の減額幅が大きいため節税メリットが大きいです。例えばビジネスパーソンであっても不動産投資を行うことで20万円を超える不動産所得を得ている場合は確定申告をする必要があります。

また本業の事業所得や給与所得などと不動産賃貸業の所得を合算する(損益通算)ことで節税が可能です。つまり不動産賃貸業で経費を計上して赤字になるとトータルの所得を圧縮することができます。なかには「赤字が出るなら不動産投資をする意味はない」と思う人もいるかもしれません。しかし不動産賃貸業においては合法的に帳簿上のみの赤字を計上できるスキームがあります。

不動産投資を行う場合、「減価償却費」という経費を活用することが可能です。減価償却費とは、建物や付帯設備の経年劣化を毎年の経費として計上するもの。建物や付帯設備が経年劣化しても修繕が発生しない限り実際の費用が発生するわけではありませんが会計上はこれが経費として認められているのです。そのため実際の出費を伴わずに帳簿上の経費を作ることができます。

例えば4,000万円のRC造新築マンションを2020年1月1日に土地と建物の比率を1:1の割合で購入したとしましょう。まず減価償却は建物のみが対象となるため、2,000万円が建物の取得価格(償却対象)となります。次に減価償却費は、建物の取得価格に耐用年数に応じた償却率を乗じることによって算出。耐用年数とは、以下の計算式で求められる会計上の数値です。

* 減価償却費=建物の取得価格×耐用年数に応じた償却率
* 耐用年数=(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×20%)

償却方法は、物件の取得年月日によって定額法と定率法が別個に適用されることになっているため、いずれを適用するかで償却率が異なるのが特徴です。2016年4月1日以後に取得した物件は、定額法が適用されるため、本事例は定額法が適用されます。償却率は、国税庁が公表している「減価償却資産の償却率表」を参照しましょう。

RC造の建物の法定耐用年数は47年です。そのため新築の本物件は耐用年数が47年で償却率は0.022となります。取得1年目の減価償却費は以下の通りです。

* 建物の取得費用2,000万円×償却率0.022%=減価償却費44万円

なお2年目以降も同様の計算方法で減価償却費を算出します。この際、耐用年数が毎年変わるため、耐用年数を再度算出したうえで償却率を乗じることが必要です。一方、同じ条件の物件を築20年の時点で購入した場合の減価償却費は以下のようになります。

* 耐用年数:(法定耐用年数47年-経過年数20年)+(経過年数20年×20%)=31年
* 定額法償却率:0.033%
* 建物の取得費用2,000万円×償却率0.033%=減価償却費66万円

建物の取得価格は同じ2,000万円ですが築年数が経過している分、耐用年数が短くなります。つまり新築であれば小さく長く築年数が経過しているほど大きく短く償却期間を取れるということです。減価償却費のみで大きな赤字を作り出すのは難しいかもしれません。しかしその他の固定費(管理費・修繕積立金や賃貸管理会社への管理手数料、税金など)も経費として計上できます。

また以下のような支出も経費として計上することが可能です。

* 物件視察という名目で支出した交通費や宿泊費
* 不動産会社との打ち合わせなどの名目で支出した会食費(接待交際費)
* 不動産賃貸業の業務遂行に必要な範囲内での費用

これらの経費を計上することで不動産投資による大きな節税効果が見込めます。

### 2.好条件かつ大規模な融資を受けられる
不動産投資においては多くの場合、金融機関からの融資を受けて物件を購入することになります。また「どのような条件で融資を受けられるか」が不動産投資を有利に進めるためのキーポイントです。好条件な融資の要素は「大規模」「長期間」「低金利」の3つ。好条件の融資を得ることで手元の自己資本を多く残しつつキャッシュフローを最大化することができます。

金融機関は融資の審査をする際、借主の個人属性を非常に重要視していることから高所得者は好条件で融資を受けやすいのが特徴です。個人属性とは、年収や職業および勤務先、金融資産といった借主個人の情報のことで「金融機関がどのような条件でその人に融資をするか」を決定する際の判断材料となります。

例えば年収が高く安定的な収入のある職に就いており純資産の多い人に金融機関は、安心してお金を貸すことができます。そのため高所得者は金融機関からの評価が高く好条件で融資を受けることができるのです。また「大規模な融資を受けられる」ということは盤石な資産を築くことにもつながります。不動産投資における「盤石な資産」とは、以下の3つの特徴を持った不動産を指します。

* 賃貸需要が長期的に旺盛
* 現物資産として長持ちする
* 資産価値が下落しない

なぜなら不動産投資は賃料収入を長く得られ大規模修繕や建替といった大きな出費を可能な限り抑え資産価値を維持したまま売却する運営によって利益が最大化されるからです。例えば都心のターミナル駅至近の鉄骨造物件は、好立地かつ強固な構造のため、資産としてのニーズも底堅く盤石な資産といえるでしょう。

またそのような物件は1億円ないし10億円以上の規模になる場合が多いため、融資を受けられるのは所得が高く社会的信用もある高所得者に限定されます。そのため好条件かつ大規模な融資を受けて盤石な資産を築けることも高所得者が不動産投資をすべき理由の一つです。

### 3.優良物件の情報が回ってきやすい
不動産投資において良い物件、すなわち上述の「盤石な資産」と言える物件の情報は「買える人」から順に回ってくることが多い傾向です。また「買える人」とは、融資を受けられたりキャッシュを持っていたりする投資家を指し高所得者はこの条件を満たしています。不動産会社には、利益目標があり各営業も個人目標やノルマを抱えていることが一般的です。

そのため購入意欲が高くても融資を受けられなかったりキャッシュもなかったりする投資家に物件情報を回すよりも「買える人」に回すほうが営業効率としては良いのです。不動産会社は、各投資家の年収や資産状況、残りの融資枠などの情報をオンタイムで管理し「どの物件をどの投資家に回すか」という営業戦略を立案しています。

その結果、良い物件は市場に出回る前に「買える人」と水面下で即座に取引が成立することが多い傾向です。したがって良質な情報を早期にキャッチできる高所得者は、情報戦である不動産投資において有利な立場と言えます。

## 高所得者ほどメリットを享受しやすいのが不動産投資

以上のように不動産投資において高所得者は大規模な投資が期待できます。盤石な資産から豊富なキャッシュフローを得られるだけでなく節税によって大きな金額を手元に保全することも可能です。高所得者は物件購入や融資のみならず節税においても大きなスケールメリットを享受できるため、不動産投資と相性が良いと言えるでしょう。

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