藤山優里
防衛大学校卒、元海上自衛官。現在まで4年間、FPならびに証券外務員として約300件の保険、資産運用、転職支援の面からの総合的なライフプラン作成を行うほか、20代、フリーランスや独立を目指す方が知っておいてほしい「1,000万円以上の損を防ぐ」お金の知識を発信している。

現在全国に10万人いる歯科医師。歯科医師は、勤務する場所によっても年収や働き方が大きく変わります。歯科医師のキャリアアップや、歯科医師としてのキャリアの歩み方を探ります。

歯科医師の転職事情とは?

現在歯科医師は約10万人おり、「過剰市場」といわれています。過剰市場における歯科医師の転職事情について見ていきます。

最終的には開業医を目指す

厚生労働省のデータによると、平成30年現在の歯科医師は10万4,908人。人口10万人あたりの歯科医師の人数は83人であり、人口約1,200人に対して1人の歯科医師がいる計算になります。

歯科医師には病院などに勤務をしている「勤務医」と、自身で診療所を経営している「開業医」がいます。

平成14年の9万2,874人から約13%増えており、女性の歯科医師も増えています。以下のグラフは、厚生労働省のデータを基にした、歯科医師が働いている場所別の人数を時系列で見たものです。


引用:厚生労働省(施設の種別にみた歯科医師数 )

現在診療所で働いている歯科医師は約9万人で、歯科医師の9割近くが「診療所」で働いていることがわかります。また、診療所で働く歯科医師は右肩上がりで増えていますが、病院や附属病院で働く歯科医師の人数は横ばいです。

診療所を経営している歯科医師もいます。平成26年のデータですが、全国の歯科医院の数は6万8,592件で、これは平成27年のコンビニエンスストアの数よりも多いです。このことから、歯科医師は最終的に「開業医」を目指す人が多いといえるのではないでしょうか。

勤務医と開業医の年収の違いは?

次に、歯科医師の勤務医と開業医の年収の違いを見ていきましょう。勤務医と開業医の年収には、大きな差があります。厚生労働省による「平成29年医療経済実態調査」によると、勤務医の平均年収は621万円、開業医の平均収益は1,187.9万円です。

開業医の平均収益の中には、歯科医師自身の報酬のほかに歯科診療所を維持していくための設備購入資金なども含まれているため、すべてが給与として支払われるわけではありません。とはいえ毎年高額な設備を購入するわけではないので、平均年収はやはり開業医のほうが高いといえるでしょう。

開業医を目指すもう一つの理由

「収入」は歯科医師が開業医を目指す理由の一つですが、他にもあります。それは、歯科医師としてどのような「技術」を身につけていきたいかということです。

最近では通常の歯科の他にも「審美歯科」や「矯正歯科」のような診療所も見かけるようになってきました。通常の虫歯の治療だけでなく「歯をきれいに見せる」ということもニーズとして高まってきています。このようなことをやっていきたいけど病院では技術を高めることが出来ない、ということも開業医を目指すもう一つの理由ではないでしょうか。

開業医を目指すために必要な資金とは?

歯科医院を開業するには、最低5,000万円はかかるといわれています。もちろんすべてが自己資金ではありませんが、全額を融資で賄うのは現実的ではないため、ある程度の自己資金を準備しておかなければなりません。開業に必要な資金には、以下のようなものがあります。

・開業する場所(ビルのテナントなど)の敷金・礼金
・診療所の内外装費用
・医療機器の購入費用
・広告費
・当面の運転資金

開業の際の費用として特に大きいのは、敷金・礼金や医療機器の購入費用、内装外装費です。月額30万円の場所を借りて開業する場合、敷金・礼金だけでも200万円程度かかります。診療所が大きい場合は、それ以上の費用がかかることもあるでしょう。医療機器の購入費用は診療の内容にもよりますが、最初は診療台やレントゲンの設備といった高額なものをそろえる必要があるため、かなりの費用がかかります。リースという手段もありますが医療機器にしか使えないため、リースを利用したとしても開業には多額の費用がかかります。

多額の費用がかかる診療所ですが、歯科診療所は平成26年時点で約7万件もあるため、開業しても集客に困る歯科医師は少なくはありません。そのため、開業を目指す場合はどのようなキャリアプランを立てるかが重要です。

歯科医師としてどのようなキャリアを歩むのかが大切

歯科医師の役目は、虫歯を治すことだけではありません。
虫歯を予防したり、歯並びを矯正したりすることも歯科医師の仕事です。
したがって、勤務医時代に「将来どのような歯科医師になるか」を常に考えて働くことが必要なのです。歯並びを矯正したり、見た目をきれいにしたり、場合によっては口まわりにけがを負った時の対処も歯科医師が行います。

「歯科医師としてどのような技術を身に付けたいか」ということを含めて、歯科医師としてのキャリアプランを早いうちに立てることが非常に重要です。このキャリアプランが、勤務医としてのモチベーションにもつながるでしょう。

キャリアプランだけでなく資金面も含めたライフプランも

「歯科医師としてどのようなキャリアを歩んでいくか」を考えておくことも大切ですが、同時に資金面を含めたライフプランも立てる必要があります。

特に開業医を目指す場合は、自己資金が必要です。開業にはどのくらいのお金がかかるかを調べて、「そのためには勤務医時代にどのくらいお金を貯めるか」も考えておかなければなりません。親から援助を受けられるのであれば、それも織り込んでライフプランを立てる必要があります。

歯科医師としての「キャリアプラン」とそのための「ライフプラン」、この2つを同時に考えることが歯科医師として成功するためには不可欠なのです。