薬剤師は、比較的安定した収入を得ているケースが多いため「転職とは無縁」と考えている方もいるのではないでしょうか。しかし薬剤師の年間の離職率は約10%、パート薬剤師の離職率は約20%というデータもあり3年以上勤務を続ける薬剤師は全体の約70%といわれています。つまり3年で約30%の薬剤師が離職しているということです。

なぜ薬剤師に転職が多いのでしょうか。安定した年収を持つ薬剤師ですがさまざまな理由で収入をさらに増やしたいと考えている方が多いことが考えられます。本記事では薬剤師に転職が多い理由を解説し、薬剤師を含む医療に携わる方に向けて転職以外で収入を増やす方法も紹介していきます。

薬剤師の転職の理由

薬剤師の転職の理由は、主に以下の3つが考えられます。

・ 職場の人間関係
・ ライフスタイルの変化
・ 収入を増やすため

職場の人間関係

職場の人間関係の悩みが転職の理由となっていることは薬剤師に限りません。しかし薬剤師は、調剤薬局で働く場合、コミュニティが狭いため、相性の合わない人と距離を置くことが難しくストレスがたまりやすい可能性があります。薬剤師は、病院やドラッグストアで働くこともありますがそれぞれに特有の人間関係のストレスがあるといえるでしょう。

また薬剤師は、専門資格のため、特別な資格を持たない人と比較すると転職しやすい傾向です。次の職場で新たな人間関係を構築するほうがストレスを抱えたまま働き続けるより合理的と考える方も多いのかもしれません。

ライフスタイルの変化

結婚や出産などのライフスタイルの変化に伴い転職を選択する人もいます。なぜなら例えば新居の購入で引っ越しをする際に自宅から職場が遠くなる場合、近い場所へ転職することができるからです。薬剤師は、ニーズの高い職業のため、ライフスタイルの変化でも気軽に転職を選択することができます。一つの職場にこだわる必要が少ないことが転職率を上昇させている要因といえるでしょう。

収入を増やすため

薬剤師は、上述したように比較的安定した収入が見込める職業です。しかしなかには、薬学部に通った際の奨学金の返済に苦しむ人も少なくありません。そのため現在より収入待遇の良い職場を求めている場合もあるのです。奨学金の返済に苦しむ薬剤師が増えた背景には、2006年に施行された学校教育法の改正が関係しています。同年に薬学部は、学部の修行年限が4年制から6年制に延長され薬剤師法の改正により薬剤師国家試験の受験資格も6年制学部の卒業者に変更されました。

在学期間の延長によって利用する奨学金の額が増加し奨学金の返済に苦しむケースが増えたことが考えられます。また毎月の返済額が生活費を圧迫し十分な貯蓄ができず将来に不安を抱えていることが転職の理由の一つともいえるでしょう。

薬剤師が転職以外で収入を増やす方法

現在の職場で人間関係やライフスタイルに不満がない場合は、転職以外の方法で収入を増やすことも検討したほうがいいでしょう。ここからは、転職以外で収入を増やす方法を2つ紹介します。

・ 副業を始める
・ 資産運用を始める

副業を始める

空き時間に薬剤師資格を利用した副業を始めることも収入を増やす方法の一つです。例えば以下のような副業が考えられます。

・ 繁忙期で人員を探している薬局や、病院でのスポットアルバイト
・ 薬剤師資格を利用して医療記事の監修を行う

ただし薬剤師の中でも管理薬剤師と公務員薬剤師は、副業が禁止されているため注意が必要です。また副業が禁止されていない場合でも企業の就労規則によって禁止されている場合があります。企業による副業禁止ルールは、プライベートな時間に限れば法的拘束力は必ずしもありません。しかし調剤薬局などの狭いコミュニティでルールを破ったことが発覚すれば人間関係に影響を及ぼす可能性があります。

そのため本業の企業で副業が禁止されている場合は、就労規則に従ったほうが無難です。副業をする場合は、必ず自身の雇用条件を確認してから自己責任で行うようにしましょう。

資産運用を始める

薬剤師に関わらず医療従事者は、多忙な方が多い職業です。しかし専門資格が必要になる医療従事者は、年収が高い傾向のため、余裕資金を活用して資産運用が始めやすいといえます。投資の内容によっては、実際の運用を他人に任せることもできるため、プライベートの時間を大きく削ることはありません。副業禁止の原則に関して資産運用は事業的規模でなければ副業にはならず誰でも始めることができます。

そのため副業禁止の管理薬剤師や公務員薬剤師も収入を増やす手段として利用可能です。貯蓄に余裕がない薬剤師の方でも少額から始められる資産運用もあります。まずは、少額から投資を実践してみることも選択肢の一つです。

薬剤師が実践できる資産運用

薬剤師が実践できる資産運用は、主に以下の3つです。

・ 株式投資
・ 投資信託
・ 不動産投資

株式投資

株式投資は、企業が発行する株券を購入して配当金を受け取ったり売買した差益を得たりする資産運用の方法です。企業が配当金や株主優待を実施していれば決められた期日に株式を保有しているだけで配当金や、株主優待を受けることができます。配当金は、「1株あたり〇円」と決められているため、保有している株数が増えるほど受け取る配当金を増やすことが可能です。

株主優待は、企業ごとに定められた株数や期間、株式を保有していると自社製品や金券などがもらえます。ただし日本株の場合、配当金や株主優待は年約2~4回しか受け取ることができません。売買を頻繁に行うことで差益を得ることもできますが売買のタイミングを見極めることはプロでも難しいのが特徴です。

銘柄の選択も自分で行う必要があるため、手間や時間がかかり投資初心者には向かない投資方法といえます。

投資信託

投資信託は、プロに運用を任せられる商品のため、株式投資とは異なり資産運用の知識がなくても投資することが可能です。ネット証券会社では、100円という少額から始められるところもあります。貯蓄に余裕がない薬剤師の方でも始めやすく毎月一定額の投資を行うと決めて運用を続ければ老後の資産形成にもなるでしょう。

また、老後の資産形成が目的であればiDeCoの利用がおすすめです。iDeCoは毎月、保険料の積み立てる形で投資信託に投資します。iDeCoで投資した投資信託の利益にかかる税金は非課税となり、支払った保険料は申告することで税金の還付が受けられます。収入が安定していれば、節税効果も大きいでしょう。老後を含めた将来に備えるために行うなら有効な投資方法です。

しかし毎月の収入を増やす目的で運用するのは難しいです。また、プロが運用する商品ですが元本割れのリスクがあります。

不動産投資

不動産投資は、一般的に投資物件を銀行融資で購入してローン返済を賃料収入でまかなう投資方法です。立地エリアなどチェックするポイントはありますが毎月安定した収益が期待できる投資といえるでしょう。薬剤師は、収入が安定している傾向のため銀行から不動産投資ローンを組みやすい点も大きなメリットです。社会的信用力が高いため、物件を購入するための資金をすべて用意できなくても、不足した資金をローンで補えば不動産投資を始めることが期待できます。

また薬剤師のような高い年収を持つ医療従事者は、税金負担が大きいため、節税が重要です。不動産投資における物件の購入費用は経費として扱われるので、経費が投資の利益を上回り、不動産所得がマイナスになった場合は、給与所得との損益通算が可能です。節税の観点からも薬剤師と節税は愛称のいい投資法といえるでしょう。奨学金の返済で生活が苦しい場合は、奨学金の返済と投資信託のような少額投資を実践してから不動産投資を始めるのがおすすめです。

収入を積極的に増やしたい薬剤師の方は、一度不動産投資を検討してみてはいかがでしょうか。

薬剤師の資産運用には不動産投資がおすすめ

本業以外で収入を増やしたい薬剤師の方は、転職や副業だけでなく資産運用に目を向けることも選択肢の一つです。薬剤師の資産運用には、ローンの返済が完了すれば毎月の収入の上昇につながり税金対策にもなる不動産投資が向いています。ただし不動産投資を始めるには勉強が必要になるため、空き時間を見つけて知識を身に付けましょう。