本間貴志
ビジネス書に特化した編集会社のサラリーマン・ライターを経て、資産運用や税務の分野を専門とするライターとして活動。自主管理で賃貸経営をする不動産投資家の顔も持つ。

中古区分マンション投資は、始める世代によって強みが変わってきます。不動産投資の成功ポイントの一つは、「世代ごとの強み」に合わせた適切な運用です。ここでは、20代・30代・40代、それぞれの世代で中古区分マンション投資を始めるときの強みを解説します。

中古区分マンション投資の世代を横断する共通メリット

まずは、中古区分マンション投資の世代を横断する共通メリットを見ていきます。新築区分マンションと比べたときの主なメリットは以下の通りです。

・ 物件価格が割安
・ 高利回りの傾向がある
・ 家賃収入がすぐに入ってくる(オーナーチェンジ物件の場合)
・ 物件の選択肢が多い など

一方、中古区分マンション投資のデメリットには以下のようなものがあります。

・ 修繕費がかかりやすい
・ 空室リスクが高まりやすい など

ただこれらのリスクは、築浅の好立地物件を購入すれば軽減できるものです。

20代・30代・40代の中古区分マンション投資を始めるときの強み

前述の中古区分マンション投資のメリットとともにしっかりと把握しておきたいのが世代ごとの強みです。20代・30代・40代でそれぞれに以下のような強みがあります。

20代で中古区分マンション投資を始めるときの強み

20代の中古区分マンション投資の強みは「長期ローンを組みやすいこと」です。長期ローンを組んで不動産投資を有利に進めることは、よく「時間を味方につける」と表現されます。長期ローンを組むことができるとなぜ有利になるのでしょうか。例えばリタイア予定年齢をもとにローン返済期間を設定したとしましょう。

リタイア予定年齢が60歳の場合、現在25歳の人であれば35年ローンを組むことが可能です。しかし同じリタイア予定年齢が60歳でも現在45歳の人の場合は、15年しかローンが組めません。ここで注目したいのは、同額のローンを組んでも返済期間によって毎月の返済金額が変わってくる点です。端的にいえば返済期間を長くするほど毎月の返済金額は少なくなります。

先述した例でいえば長期ローンを組める25歳の人のほうが45歳の人よりも毎月の返済額は抑えることができるのです。例えば3,000万円をローンで借りた場合、現在年齢(返済期間)によって毎月の返済額は以下のように変わってきます。

現在年齢 25歳 45歳
返済期間
(完済60歳)
35年 15年
毎月の返済額 12万3,987円 21万4,464円

オリックス銀行「投資用不動産ローンお借り入れシミュレーション」による計算
※設定条件:返済期間25年、金利 3.5%

一方、入ってくる家賃収入は返済期間が変わっても同じです。そのため返済期間が長くなるほど毎月の「家賃収入-諸経費・ローン返済」の手残りは増えやすくなります。

30代で中古区分マンション投資を始めるときの強み

30代の中古区分マンション投資の強みは「収入が安定してくること」です。 不動産投資では、ローンを組んで手持ち資金にレバレッジをかけられることが魅力の一つ。不動産投資におけるローン審査は、年収が増えるほど有利になるといわれています。一般的な給与所得者の場合、30代に入ると年収が増える人が多いため、比較的審査に通過しやすく中古区分マンション投資を始めやすいといえるのです。

ちなみに一般的な不動産投資ローンの年収基準は、700万~1,000万円以上といわれています。ただしこの基準はあくまでも目安です。年収基準に達していたり超えたりしていてもローン審査に通らないこともあります。特にメガバンクは、審査のハードルが高い傾向です。参考までに30代になるとどれくらい年収が上がってくるのかを見てみましょう。

国税庁によると20~30代の給与所得者(男性)の平均年収は、270万~400万円程度です。しかし30代になると470万~520万円程度と一気に上がってきます。

年齢 年収
20~24歳 278万1,000円
25~29歳 402万7,000円
30~34歳 470万円
35~39歳 528万8,000円
40~44歳 582万1,000円
45~49歳 629万2,000円

一部抜粋:令和元年「民間給与実態統計調査結果(事業所規模別の年齢階層別の給与額 )

もちろん上記は一般的な給与所得者の平均年収です。不動産投資をするような人は、もっと年収が高いと思われますが年齢が上がるにつれて年収も上がっていく傾向は同じといえるでしょう。こういった高年収に達した人たちは「都心の築浅マンション」のような高額な中古区分マンションでも審査に通りやすくなるといえます。

さらに高年収を武器に「好立地の中古区分マンション」を複数購入することで資産運用の規模拡大もしやすくなるでしょう。

40代で中古区分マンション投資を始めるときの強み

40代の中古区分マンション投資の強みは「豊富な貯蓄があること」です。40代は、20~30代のような若い世代よりも金融資産の保有量が多い傾向にあります。そのため金融資産を活用して不動産投資ローンの借入総額を抑えることでキャッシュフローを増やしやすくなることが強みです。関連データを見てみましょう。

まずは、若い世代と40代の金融資産の比較です。金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(2020年度/2人以上世帯)」の調査では、世代が高くなるほど金融資産の保有額が増えていきます。

世帯主の年齢別 金融資産の保有額
20歳代 350万円
30歳代 644万円
40歳代 1,177万円
50歳代 1,955万円
60歳代 2,154万円
70歳以上 2,208万円

引用:「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和2年)」

20代の金融資産の保有額は350万円ですが40代になると3倍以上の1,177万円にまで増えています。先に見た年収と同様に金融資産の保有額は、あくまでも平均的な内容です。高年収の人であればさらに豊富な金融資産を保有しているケースも想定できるでしょう。さらに見ていくと50代以上は40代よりも潤沢な金融資産を保有していることが分かります。

しかし50代以上になると不動産投資ローンの審査に通らないケースも増えてくる傾向です。そのため40代は「頭金を多めに払って毎月の返済額を減らす」という観点で絶好のタイミングといえます。参考までにオリックス銀行の不動産投資ローンの要件は「借入時の年齢が55歳未満」です。実際に頭金を多く入れることでどれくらい毎月の返済額が減るのでしょうか。

一例では、3,500万円の中古区分マンションを購入した場合、頭金によって毎月の返済額は大きく変わってきます。

頭金の額 0円 300万円 1,000万円
借入総額 3,500万円 3,200万円 2,500万円
毎月の返済額 17万5,218円 16万199円 12万5,155円

オリックス銀行「投資用不動産ローンお借り入れシミュレーション」による計算※設定条件:返済期間25年、金利 3.5%

また富裕層の場合、50代が近づいてくれば相続対策を少しずつ意識するケースもあるでしょう。そういった人たちは、中古区分マンションをうまく活用して家賃を得ながら相続税対策が期待できます。

不動産投資を始めるときは「強みと弱みの整理」が大事

ここでは、20代・30代・40代それぞれの世代の中古区分マンション投資を始めるときの強みについて解説してきました。とはいえすべての人がこの内容に当てはまるわけではありません。例えば「20代でも豊富な金融資産がある」「40代でも金融資産があまりない」といったケースもあるでしょう。不動産投資を始める際に大切なのは、自身の強みをしっかりと把握し適切な運用をすることです。

本稿の内容をもとにぜひ自分自身の強みを考えてみてはいかがでしょうか。同時に「収入が少ないので審査で不利」「貯蓄が少ないので融資比率が高い」といった弱みも整理してカバーできる対策を立てるのが理想です。強みと弱みの整理は、自分だけで行うことは意外と難しいため、不動産会社の担当者やファイナンシャルプランナーなどの専門家の協力を得ながら整理するのがよいでしょう。