リモートワークにおける「隠れ残業」が問題となっています。「睡眠不足や長時間労働は体に悪い」と感覚的に理解していても目の前に仕事があるとつい無理をしてしまう人は注意が必要です。本稿では、「なぜ長時間労働が体に悪いのか」についてまとめた最新の研究を紹介します。

長時間労働が心臓病と脳卒中による死亡者を増加させる可能性

2021年5月に世界保健機関(WHO)と国際労働機関(IOL)が発表した共同研究によると2016年に長時間労働を原因として死亡した人は74万5,000人(2000年対比+29%)に達したといいます。2000~2016年までの間、長時間労働による心臓病で死亡した人はなんと42%です。脳卒中によって死亡した人は、19%増加しているとみられています。

同研究では、週の労働時間が55時間を超えると35~40時間の場合と比べて虚血性心疾患と脳卒中のリスクが高まることが分かりました。また死亡者の72%が男性で45~74歳の間に週の労働時間が55時間を上回っていた60~79歳の年齢層に特に影響があったそうです。

(※)194ヵ国における長時間労働に起因する虚血性心疾患および脳卒中の世界的、地域的、および全国的負担、2000~2016 年: 疾病および傷害の労働関連負担に関するWHO/ILO共同推定からの体系的な分析

リモートワークで自宅残業が増えていませんか?

日本労働組合総連合会が行った「テレワークに関する調査2020」によると51.5%が「通常の勤務よりも長時間労働になることがあった」と答えています。自宅での業務は、プライベートと仕事の切り分けが難しくつい働き過ぎてしまう人が多くいる傾向です。周囲に人がいないリモートワークでは、従業員自身が長時間労働にならないよう気をつける必要があります。

例えば以下のような対策をとると効果的です。

・ タイマーとアラームをセットして残業をしないようにする
・ どうしても残業が必要なときは適宜休憩をとったり体を動かしたりする

2021年3月に厚生労働省が発表した「テレワークの適切な導入および実施の推進のためのガイドライン」では、企業側にリモートワーク中の従業員の健康管理を行い長時間労働による健康障害の防止を図るよう求めています。

「リモートワークで残業が増えた」と悩んでいる人は、自分の健康のためにも残業が増えた原因とそれを解消する対策を考えて実行することが大切です。会社側の体制や使用しているシステムに残業の原因があると考えられる場合は、会社側に相談してみましょう。

健康という財産を守ろう

体調を崩したり大病したりしたことがない人は「健康は当たり前に備わっているもの」と思ってしまいがちです。自分の体を守れるのは自分だけしかいませんので「自分は丈夫だから」と安易に残業するのは避けましょう。