薬剤師としての働き方には、病院勤務や薬局勤務、さらにはドラッグストア勤務などさまざまな形態があります。2019年に薬機法の一部が改正されたことで今後の薬剤師や薬局のあり方が大きく見直されることとなりました。気になる薬剤師の年収や働き方にはどのようなものがあり今回の法改正によりどのように変わっていくのでしょうか。

薬剤師の年収はどのくらい?

総務省による「令和2年賃金構造基本統計調査」によると2020年度における薬剤師の年齢別平均年収は、以下の通りです。

年齢区分 平均年収
20~24歳 約353万円
25~29歳 約457万円
30~34歳 約526万円
35~39歳 約589万円
40~44歳 約610万円
45~49歳 約658万円
50~54歳 約656万円
55~59歳 約641万円
60~64歳 約582万円
65~69歳 約696万円
70歳~ 約469万円

全体で見ると平均年齢は41.2歳でした。平均年収は、約565万円と同じ平均年齢の看護師の平均収入となる492万円と比較しても高い水準にあることが分かります。

薬剤師のさまざまな働き方とその特徴

薬剤師には、勤務先によって担う役割が異なります。ここでは、5つの勤務形態について確認していきましょう。

病院勤務
医師から指示を受けた薬の処方や点滴液の調合のほか、患者に対する服薬指導などが主な仕事です。

調剤薬局勤務
医師が発行した処方せんをもとに薬を処方し場合によってはジェネリック医薬品の紹介を行うこともあります。近隣の病院や診療所の外来受付時間に合わせて営業している店舗が多い傾向です。

ドラッグストア勤務
ドラッグストアにおける薬剤師の仕事内容は、一般用の医療品の販売や在庫管理などです。また販売の際にはお客さまからの相談に乗ることもあります。

製薬会社勤務
なかには、薬学部を卒業し、製薬会社に勤める方もいます。主に新しい薬を作るための研究業務を行ったり医療機関と連携して薬の取り扱いにおける情報提供なども行ったりすることが仕事内容です。

学校薬剤師勤務
学校薬剤師は、認知度が低いかもしれません。学校薬剤師とは、学校保健安全法に基づいて設置が義務付けられているものです。大学以外の学校、さらに認定こども園などにおいて学校薬剤師を配置することが必要となります。学校薬剤師は、薬品類の管理はもちろん健康相談や保健指導などが主な仕事内容です。

普段は、病院や薬局に勤めている薬剤師が兼務するケースが多く薬剤師であれば誰でもなれるわけではありません。人間性や教育への理解、必要な知識を有しているかどうかが求められます。

薬機法改正の内容とは?

2019年に改正された薬機法の正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」です。今回の改正により患者が住み慣れた地域で安心して処方された薬や一般用の医療品を利用できることを目的とした薬剤師および薬局のあり方の見直しが行われることとなりました。具体的には、以下の2つが法制化されます。

・ 薬剤師が、調剤時に限らず必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握や服薬指導を行う義務
・ 薬局薬剤師が、患者の薬剤の使用に関する情報を他医療提供施設の医師等に提供する努力義務

出典:厚生労働省(施行2020年9月1日)

さらに患者自身が自分に適した薬局を選択できるよう「機能別の薬局の知事認定制度」が導入されます。機能別の薬局を分けると以下の2つです。

・ 入退院時や在宅医療に他医療提供施設と連携して対応できる薬局(地域連携薬局)
・ がん等の専門的な薬学管理に他医療提供施設と連携して対応できる薬局(専門医療機関連携薬局)

出典:厚生労働省(施行2021年8月1日)

この認定制度は、2021年8月(一部異なります)から導入されます。しかし地域連携薬局および専門医療機関連携薬局に認定されるためには、以下に挙げるようなさまざまな要件をクリアすることが必要です。

地域連携薬局の認定要件(抜粋)

・ 薬局の構造がプライバシーおよび高齢者や障害者に対応したものであること
・ 医療機関や介護施設、ほかの薬局との情報共有の体制が整っていること
・ 時間外でも利用者からの相談に乗れるなど、安心して利用できる体制の確保ができていること
・ 在宅医療の実績があることなど

専門医療機関連携薬局の認定要件(抜粋)

・ 傷病の区分は「がん」となる
・ 専門的な医療の提供を行う医療機関との情報共有の体制ができていること
・ 「がん」の専門性の認定を受けた薬剤師が常駐していること
など

申請においては、地域連携薬局としてだけでなく専門医療機関連携薬局の申請も合わせて行うことが可能です。今後は、このような認定を受けた薬局の広まりが期待されるでしょう。

タスク・シフト/シェアの必要性

医師をはじめとする医療従事者の働き方改革の一環として「タスク・シフト/シェア」が求められています。具体的には、以下のような内容です。

・ 手術室における薬剤関連業務
・ 病棟などにおける薬剤管理
・ 副作用の状況把握
・ 患者を訪床および情報収集し医師に処方提案や処方支援を実施など

いずれも現行制度の下で実施が可能です。これまで病院内ではっきりと区分化され薬剤師の業務外となっていたものも徐々に薬剤師の業務内容として一部移管されそれが明確化されることが予想されます。このような変化にも従順に対応していけるように常に状況の変化を把握しておくことが非常に重要です。

また医療従事者の一人として地域に根付いた医療環境の構築に貢献する意識を持ち続けておくことも大切でしょう。

これからの薬剤師のあり方とは

今後の薬剤師のあり方で大切なことは、時代に即した専門的な知識をもつことです。例えば「認定薬剤師や専門薬剤師といったより専門性の高い認定を受ける」「さまざまな薬剤師の専門資格を勉強する」といったことが必要になってくるでしょう。さらにそれらの認定を受けることで収入アップを目指すことも期待できます。

認定薬剤師

認定薬剤師制度に基づいた一定期間の研修を受け最新の知識そして技術を身に付けていると認められた薬剤師のことを認定薬剤師といいます。認定薬剤師になることで常に最新の知識を得ることができるほか病院勤務であれば医師や看護師からの信頼度も高くなることが期待できるでしょう。また認定薬剤師には多くの種類があり「がん薬物療法認定薬剤師」などさらに専門知識に特化した資格もあります。

がん薬物療法認定薬剤師

がん薬物療法認定薬剤師の資格は、薬剤師としての実務経験が3年以上かつ病院などに勤務してがんに対する薬物療法に3年以上従事していることが必要です。そのうえでがん治療に対する講習を一定時間以上受け認定試験に合格することで取得することができます。認定試験を受けるためには、さらにがん患者に対する薬剤指導の経験が複数のがんにおいて50症例以上あることが必要です。

この資格を取得することで専門医療機関連携薬局にて活躍できることが期待されます。他に以下のような専門薬剤師認定制度もあるので押さえておきましょう。

・ 感染制御専門薬剤師:感染症治療に関わることができる
・ 精神科専門薬剤師:精神疾患に対する薬物療法に特化
・ 妊娠・授乳婦専門薬剤師:妊婦や授乳婦に対するカウンセリングを目的
・ HIV 感染症専門薬剤師:HIV 感染症に対する薬物療法に特化

薬剤師における専門資格は、民間団体が独自に設定しているものも多く見られます。これからの介護需要の増加を見込んだ「在宅療養支援認定薬剤師」なども登場しているため、自身の特性と今後の需要を見据えた自己研さんが必要になるでしょう。