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個人が一定の寄附金を支払った際には、所得税における税制措置として寄附金控除(所得控除)と寄附金特別控除(税額控除)の2種類があります。適用を受ける際には、併用が認められていないため、いずれか一方を選択することが必要です。今回は、それぞれの制度について詳しく説明するとともに「寄附金制度を使うことでどれだけの減税効果があるのか」についても2020年の税制改正を反映したうえで紹介します。

寄附金控除(所得控除)の概要

個人が特定寄附金を支出した際には、所得税の計算上、寄附金控除(所得控除)の適用を受けることが可能です。その際、以下の計算式で算出した金額を総所得金額から控除することになります。計算式は、「特定寄附金の額の合計額(総所得金額の40%を限度とする)- 2,000円」です。ここでいう特定寄附金に該当するものについては、以下の通りです。

  • 国、地方公共団体に対する寄附金
  • 財務大臣が指定した寄附金(指定寄附金)
  • 特定公益指針法人に対する寄附金
  • 特定公益信託に対し支出した金銭
  • 政治活動に関する寄附金
  • 認定NPO法人に対する寄附金
  • 特定新規中小会社の発行株式の取得に要した金額

寄附金特別控除(税額控除)の概要

寄附金特別控除(税額控除)については、寄附金控除(所得控除)の対象となる寄附金のすべてが寄附金特別控除(税額控除)との選択制となっているわけではありません。逆に寄附金控除(所得控除)よりも範囲が限定されていることを理解しておきましょう。寄附金特別控除(税額控除)は、所得税額の25%を限度として以下の計算式で算出した金額が所得税から控除されることになります。

  • (税額控除の対象となる寄附金の額の合計額(総所得金額の40%を限度とする))-2,000円×40%
  • (「政党等寄附金特別控除額」の場合は30%)

寄附金特別控除(税額控除)の対象となる控除は、以下の3つです。

  • 政党等寄附金特別控除
  • 認定NPO法人等寄附金特別控除
  • 公益社団法人等寄附金特別控除

これらの控除について「寄附金控除(所得控除)」「寄附金特別控除(税額控除)」のどちらか有利なほうを選ぶことが可能です。

所得税に関する所得控除と税額控除の減税効果は?

では、いったいどれくらいの減税効果があるのでしょうか。ここからは、所得控除と税額控除を選択した場合の差額について2020年の税制改正を加味したうえで比較してみます。モデルケースとして認定NPO法人に対する寄附金10万円を支出した場合を想定し、4つの年収別に比較した結果は以下の通りです。

  • 年収800万円(累進税率20%)の場合
  • 年収1,500万円(累進税率33%)の場合
  • 年収2,500万円(累進税率40%)の場合
  • 年収5,000万円(累進税率45%)の場合

1.年収800万円(累進税率20%)の場合

項目所得控除を選択した場合税額控除を選択した場合(参考)
寄附金を支出しなかった場合
総所得金額(給与所得)610万円610万円610万円
所得控除額※210万円210万円210万円
所得控除(寄附金控除)9万8,000円0円0円
課税総所得金額390万2,000円400万円400万円
所得税(税額控除前)35万2,900円37万2,500円37万2,500円
認定NPO法人等寄附金特別控除0円3万9,200円0円
寄附金による減税効果額1万9,600円3万9,200円

※社会保険料:120万円、生命保険料控除:4万円、扶養控除:38万円、基礎控除:48万円と仮定

2.年収1,500万円(累進税率33%)の場合

項目所得控除を選択した場合税額控除を選択した場合(参考)
寄附金を支出しなかった場合
総所得金額(給与所得)1,305万円1,305万円1,305万円
所得控除額※280万円280万円280万円
所得控除(寄附金控除)9万8,000円0円0円
課税総所得金額1,015万2,000円1,025万円1,025万円
所得税(税額控除前)181万4,160円184万6,500円184万6,500円
認定NPO法人等寄附金特別控除0円3万9,200円0円
寄附金による減税効果額3万2,340円3万9,200円

※社会保険料:190万円、生命保険料控除:4万円、扶養控除:38万円、基礎控除:48万円と仮定

3.年収2,500万円(累進税率40%)の場合

項目所得控除を選択した場合税額控除を選択した場合(参考)
寄附金を支出しなかった場合
総所得金額(給与所得)2,305万円2,305万円2,305万円
所得控除額※340万円340万円340万円
所得控除(寄附金控除)9万8,000円0円0円
課税総所得金額1,955万2,000円1,965万円1,965万円
所得税(税額控除前)502万4,800円506万4,000円506万4,000円
認定NPO法人等寄附金特別控除0円3万9,200円0円
寄附金による減税効果額3万9,200円3万9,200円

※社会保険料:250万円、生命保険料控除:4万円、扶養控除:38万円、基礎控除:48万円と仮定

4.年収5,000万円(累進税率45%)の場合

項目所得控除を選択した場合税額控除を選択した場合(参考)
寄附金を支出しなかった場合
総所得金額(給与所得)4,805万円4,805万円4,805万円
所得控除額※292万円292万円292万円
所得控除(寄附金控除)9万8,000円0円0円
課税総所得金額4,503万2,000円4,513万円4,513万円
所得税(税額控除前)1,546万8,400円1,551万2,500円1,551万2,500円
認定NPO法人等寄附金特別控除0円3万9,200円0円
寄附金による減税効果額4万4,100円3万9,200円

※社会保険料:250万円、生命保険料控除:4万円、扶養控除:38万円、基礎控除:0円と仮定

所得税に関する所得控除と税額控除の有利選択の目安

通常、所得控除を選択する場合においては、累進税率を加味する前の段階で寄附金控除額が控除されてしまいます。つまり所得控除後(寄附金控除適用後)の課税総所得金額に対して累進税率が適用され所得税が算出されることから、実際の減税効果額については「(寄附金の額-2,000円)×累進税率」となります。

一方、税額控除を選択する場合は、寄附金特別控除額が所得税から直接控除されることが特徴です。計算の順番としては、まず累進税率を適用した所得税が算出されそこから控除されるため、実際の減税効果額と寄附金特別控除額が一致します。そのため年収で比較すると所得控除については寄附金の額が同じであっても年収が高いほど減税効果が高くなるのです。

しかし税額控除については「年収に左右されることはない」ということが分かります。どちらを選択するのが有利なのかを考える際の目安については「年収に対して適用される累進税率が40%以下かどうか」です。つまり40%以下であれば税額控除を選択したほうが減税効果額は大きくなります。ただし「政党等寄附金特別控除」の支出は、累進税率30%以下が目安となることに注意が必要です。

通常であれば「減税効果においては税額控除のほうが有利となる」という考えが主流となります。しかし適用される累進税率が高い高所得者や税額控除を受ける際の限度額(所得税額の25%)を超えるような高額の寄附を行った場合については、所得控除を選択するほうが有利となるケースもあるのです。寄附金控除における所得控除と税額控除の選択は、単に税額控除の有利さを過信してはいけません。

実際に計算してみて優位なほうを選択することが大切です。なお確定申告の際に所得控除を選択し、あとで計算してみた際に税額控除のほうが減税効果は高いことが判明した場合でも、その後に選択方法の変更は認められません。

<所得控除、税額控除の選択の目安>

所得控除(寄附金控除)寄附金の額が同じであっても年収が高いほど減税効果が高くなる
税額控除(寄附金特別控除)累進税率が40%以下であれば減税効果額が大きくなる

忘れてはいけない個人住民税における寄附金税額控除

個人住民税において寄附金に係る所得控除の規定がないため、以下のものは住民税の計算において寄附金税額控除の適用を受けることはできません。

  • 都道府県・市区町村に対する寄附金(いわゆる「ふるさと納税」)
  • 住所地の都道府県共同募金会
  • 日本赤十字社支部に対する寄附金
  • 都道府県・市区町村が条例で指定する寄附金

ただし、以下の計算式で算出された金額が寄附をした翌年の住民税から控除されることになっています。

  • (寄附金(総所得金額等の30%が限度)-2,000円)×10%

個人住民税においては、所得税における寄附金控除や寄附金特別控除の対象となる寄附金であったとしても必ずしも個人住民税における寄附金税額控除の対象となるわけではありません。そのため詳細について自治体の公式サイトなどで事前に確認しておくことが大切です。なお、「ふるさと納税」(総務大臣が指定する自治体への寄附に限る)の場合は、特例控除額も税額控除されることになっています。

このように寄附金においては、所得控除や税額控除のほか個人住民税においても減税効果が期待できるものもあるため、確定申告の際には忘れないように注意してください。